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 診療所医師の決意
【4】―2009.01.06
診療所医師の決意
かかりつけ医の重要性を力説する飯塚院長。患者からの信頼も厚い
■プライマリ・ケア 

 日本プライマリ・ケア学会のホームページによると、適切な診断と処置が身近に得られ、それ以後の治療の方向についても正確な指導を受けられることを重視する考え。患者が最初に接する医療の段階で必要な取り組みとされている。
第1部
医師と患者
 
― 地域医療の土台担う 
 
 年の瀬も押し迫った昨年12月29日、会津若松市の住宅地にあるいいづかファミリークリニックの待合室には、多くの親子連れが診察を待っていた。受診後、安心した表情を見せる子どもの保護者に、窓口のスタッフが「お大事にどうぞ」と声を掛ける。
 「今日は予想よりも多かったですね」。休憩時間となった午後2時、小児科医の飯塚敦夫院長(61)が手を休めた時には既にほぼ100人の患者を診ていた。
 「私たち診療所医師が、丁寧なプライマリ・ケア(初期的な診療)を通じてより多くの地域の皆さんにかかりつけ医として選んでもらうのが大事。すぐに大きな病院にかかりたい気持ちはあるだろうが、まずはかかりつけ医が相談を受け、重い症状の場合に病院に紹介する方法をとらないと、病院勤務医に負担が集中して地域医療全体のバランスが崩れてしまう」。疲れを見せるどころか、地域医療に果たすべき診療所医師の役割を話す口調に熱がこもる。飯塚院長の指摘するかかりつけ医は、患者にとって信頼がおけ、健康全般に気軽に相談できる医師を指す。
 只見町出身の飯塚院長は、新潟大を卒業して神奈川県の子ども医療センターで16年間勤務。40歳前後の時、地域医療に貢献したいと帰郷、地域の中核病院の小児科部長を務めた。多忙な病院勤務医の気持ちは十分に分かる。分かるからこそ、診療所医師としての役割をおろそかにすることはない。
 休憩後の最初の患者は同市に住む丹藤夏菜さん(12)。「今日はどうしたの」との院長の問いに、付き添いの母親の仲子さん(44)が「お腹の調子が悪い」と答える。診断は胃腸炎。診察を終えた仲子さんは、飯塚院長をかかりつけ医にした理由について「信頼できる先生だから。診たてもいいし」と話す。
 過酷な勤務状況に悲鳴を上げる病院勤務医を守るための病院・診療所の役割分担(病診連携)の必要性が叫ばれて久しい。いいづかファミリークリニックには、診療所の役割を果たす1人の医師の決意が見て取れた。
 


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