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 地域医療の在り方
【5】―2009.01.08
地域医療の在り方
高齢者の健康増進を目的にした地域医療に取り組む二瓶院長
地域医療

 先進的な医療を除く一般的で住民に身近な治療や、地域単位での医療サービスの提供システムなどを指す。近年では病気の背景にある食生活や生活環境など地域の特徴に配慮した予防医療、治療を組み合わせた総合的な取り組みの意味も出てきた。
第1部
医師と患者
 
― 生活密着の診療模索 
 
 会津盆地を流れる阿賀川にかかる会津大橋のたもとで、旧北会津村の生活に密着した医療を展開してきた二瓶クリニック(会津若松市)。二瓶忠精院長(53)は「地域医療は言葉ではなく内容。開業してから地域にあった医療の形とは何かを考えながら走ることで、自然と見えてくるもの」と自らの体験を語る。
 脳循環学の研究者として若くして頭角を現し、30歳で出身大学の付属研究機関の副院長に就任した。主に基礎的な医学研究に取り組み、後輩への指導も一段落したころ「医師としての使命は地域医療ではないか」との思いが強くなり、1993(平成5)年に開業。直面したのは、高齢化が進む故郷の現実だった。
 農村地帯の朝は早い。住民の生活リズムに合わせるため、診療所を午前7時前に開き、同8時30分から診察するシステムをとった。病院を訪れるのはほとんどが高齢者。「お年寄りが90歳や100歳まで元気に生活できるようにするにはどうすればいいのか」と頭を悩ませるようになった。
 診療方針として決めたのは3つ。障害が残る脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞を防ぐための動脈硬化への対策が第一。2つ目は、転倒骨折による寝たきりを予防するための骨粗しょう症への対策。もう1つは、若い家族が働きに出る中、雪深い地域で家に閉じこもりがちになることで誘発される認知症の対策だった。
 患者への診療を続けるうちに、動脈硬化と骨粗しょう症には手応えを得たが、高齢者の外出を促す面では診療所の取り組みに限界があると感じた。その結果、97年には診療所に併設したデイケア施設を立ち上げた。当時の会津地方では、まだまれな試みだった。
 「開業したところが故郷の北会津村でなかったら、診療所の運営は全く変わっていただろう。地域医療はそれぞれの地域に密着した形が必要」と語る。
 二瓶院長のモットーは恩師の言葉。「医業はサービス業。しかし、医学に基づいて確固たる医術を提供するサービス業として、人の命と精神を扱うもの」。地域の課題に向き合う二瓶院長の取り組みは続く。
 


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