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 周産期救急
【3】―2009.03.18
福島病院の地域周産期母子医療センター。NICUで眠る赤ちゃんを24時間体制でスタッフが見守る
周産期母子医療センター 

 リスクの高い出産や高度な新生児医療を扱う機関。本県では、特に高度な医療を担当する総合周産期センターに福島医大付属病院が指定され、地域周産期センターは福島病院など5病院。このほかに周産期医療協力施設が4病院ある。
第2部
救急医療
 
― 安全へ出産前搬送  ―
 
 妊婦と新生児にかかわる周産期医療は、医師不足が特に深刻とされる。切迫早産などリスクの高い出産に対応する本県の周産期救急医療について、地域周産期母子医療センターがある国立病院機構福島病院(須賀川市)の氏家二郎副院長(58)は「人員不足で壊滅寸前にあるものの、今ある医療資源を最大限有効利用することによって、何とか事故を防いでいる」と表現する。
 周産期の救急搬送は、医療施設間の搬送が中心。病院の妊婦健診で切迫早産の危険性が高いと診断された妊婦は、新生児集中治療室(NICU)が備わった周産期母子医療センターなどに搬送し、出産に備える。出産後の搬送で、母体や低体重児への対応が遅れることを防ぐためだ。
 氏家副院長が1月、県内14の周産期医療施設を対象に実施した調査によると、2007(平成19)年に扱った新生児1968人のうち、体重1000グラム未満の低体重児57人は全員、6カ所の総合・地域周産期母子医療センター内で出生している。出産前の救急搬送の成果といえるもので、氏家副院長は「これほど徹底している県は、ほかにない」と胸を張る。県医療計画によると、生後4週未満の新生児の出生1000に対する死亡率は1.1で、全国平均の1.3を下回っている(06年時点)。
 周産期救急は県内各生活圏を越える搬送が頻繁で、この点は妊婦、家族にとっては負担。「遠距離の搬送は、安全を保つための代償と考えてほしい。各生活圏で完結できる周産期救急は、医師不足が解消されないと実現できない」と氏家副院長は言う。
 今後の課題はNICUの空床の確保だ。少子化が進む一方、医療技術の発達などに伴い、NICUに収容される新生児の数は減少していない。氏家副院長によると、「NICUは充足しているが、(症状が改善した新生児を収容する)後方病床が県内で50床ほど足りない」。NICUの慢性的な満床状態を解消するため、まずは後方病床整備が必要なことを訴えた。
 


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