『医療危機 ’09ふくしまの現場から』TOP
 診療科の空白
【8】―2009.03.26
県北地方の救急医療を議論した対策協議会=1月27日、福島市
■管轄外搬送 

 各消防本部が管轄区域外の医療機関に救急搬送した事例を指す。2007(平成19)年の統計では、6万7983人の搬送人数の15.2%に当たる1万332人が管轄外搬送となっている。喜多方地方の66.8%が最多で、須賀川地方50.5%、伊達地方46.7%と続く。
第2部
救急医療
 
― 管轄外に搬送集中  ―
 
 「管内に医師が不足している脳神経外科や循環器科の救急患者が出れば福島市に搬送し、受け入れてもらうしかない」。旧伊達郡9町の広大な面積をカバーする伊達地方消防本部の救急担当者は複雑な表情で語る。
 交通事故や心筋梗塞(こうそく)など救急搬送の対象となる患者にとって不可欠な診療科だけに、同本部の悩みは深い。
 同本部が2008(平成20)年に救急搬送した3632人のうち、全体の47.5%に当たる1724人が、福島市を中心とした同本部管轄外の医療機関に搬送されている。診療科の空白は、地域の救急医療のシステム運用に大きな影響を与えている。
 同本部の別の救急担当者は「福島市までの距離が近く、この間に山間地がないなど地理的条件が良いのが救い。救急搬送に時間がかかって問題になったというケースは『幸いにしてない』というのが本音」と現状を指摘する。
 しかし、同本部管内の医師不足に伴う管轄外搬送は、福島市の医療機関への患者の集中をもたらしている。県北地区の医療機関、消防本部、行政機関が一堂に会して救急医療体制を話し合った1月27日の県北地域救急医療対策協議会。医療機関が「福島市消防本部の救急車も伊達の救急車も駆け込んでくる。何とかならないか」と苦言を呈した。
 伊達地方消防本部の担当者はさらに胸の内を語る。「医師の方々の気持ちもよく分かる。本部内では一つの病院に集中しないように連絡を取り合い配慮しているが、適切な治療を受けられる診療科の医師がいる医療機関を探せば、特定の病院に集中せざるをえない。われわれはお願いするしかない」
 ひとたび119番通報を受ければ、いち早く現場に急行し適切な医療機関に搬送する役目を担う消防機関。各消防本部は119番通報の適正利用を呼び掛けるなど、円滑な救急搬送を目指し努力しているが、医師の適正配置の問題は、消防機関だけでは越えられない壁となっている。
 


〒960-8648 福島県福島市柳町4の29

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