『医療危機 ’09ふくしまの現場から』TOP
 ドクターヘリ
【10】―2009.03.28
昨年1月の運航開始以来、多くの生命を救ってきたドクターヘリ
■ドクターヘリ 

 厚生労働省によると、国の導入促進事業の対象ドクターヘリは本県を含め16道府県で運航されている。このほかに静岡県などでは県単独事業として運航している。本県のヘリは昨年1月28日の運航開始以来、3月22日現在で282件出動している。
第2部
救急医療
 
― 県民の命、多数救う  ―
 
 「昨年1月のドクターヘリ運航開始から多くの県民の命が助かっている。心筋梗塞(こうそく)が原因で倒れた現場で4回、病院搬送後の治療中に17回心停止した人も今は元気に生活していますよ」。東北6県で初めて福島医大付属病院に導入されたドクターヘリの成果について、同大救命救急センタートップの田勢長一郎部長は自信を持って断言する。
 ドクターヘリは、県内12の消防本部からの要請を受け、救命救急医が搭乗して現場に急行。患者に迅速な治療を施すことで県内の救命率向上を図る役割を担っている。運航開始から昨年12月末までのヘリの現場出動は157件で、このうち58件の患者が福島医大付属病院に運び込まれた。
 いずれも重症の外傷や脳卒中などの急病で生命の危機に陥った患者だ。田勢部長は「このうち亡くなられたのは4人の方で、現場での心停止や重度脳損傷のため、どのような治療をしても救命不可能な事例だった。それ以外は助かっている」と指摘する。外傷と死亡率の関係を示す国際基準に照らした場合、死亡率50%と推定される患者は、ヘリ出動による早期治療で全員が生存しているという。
 しかし、田勢部長は「ドクターヘリは救急医療の万能の武器ではない。悪天候時や夜間には出動できないという制約に加え、消防本部からの要請がないとわれわれはドクターヘリが必要な患者の元へ出動できない」と語る。ヘリのさらなる利活用を図るため、田勢部長は各消防本部に積極的なヘリ出動要請を求めている。
 さらに「地域の通常の救急医療システムが運営されていることが大前提。ヘリはプラスアルファの効果をもたらすことはできるがすべてをカバーはできない」と、診療所や病院、救命救急センターが連携した救急システムの足腰の強さの必要性をあらためて指摘した。
(第2部おわり)
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 連載「医療危機 ふくしまの現場から」第2部は、本社報道部の菅野篤司、須田絢一が担当しました。
 


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