『医療危機 ’09ふくしまの現場から』TOP
 初期研修
【2】―2009.08.01
寿泉堂綜合病院で診療に当たる松本さん
■初期研修制度 

 初期研修(卒後臨床研修)の2年間は、臨床研修病院で幅広い診療科を経験する。地域や診療科ごとの医師不足を助長しているとの指摘を踏まえ、地域ごとの募集定員の制限や必修診療科目数の削減など、本年度から制度の一部見直しが行われた。
第3部
研修医
 
― 進路決める2年間  ―
 
 「神経系の理路整然とした世界、脳の未知性、そして何より、重篤だった人が歩いて帰れるほど回復する達成感」。脳神経外科医松本由香さん(28)は同科の魅力を話し、こう付け加えた。「初期研修の2年間がなかったら、脳神経外科は選んでいなかっただろう」
 松本さんは東京都日野市出身で福島医大卒。初期研修(卒後臨床研修)は救命救急センターを備えた太田西ノ内病院(郡山市)を選んだ。「初期研修で3次救急医療にかかわりたかった。研修医がタッチできる部分が多かった」と、充実した研修を振り返る。この経験から、救急医療と密接な関係にある脳神経外科への道が開けた。後期研修は同医大に戻り、4月から出向している寿泉堂綜合病院(郡山市)で幅広い疾患に向き合う日々だ。
 脳神経外科など外科系は、長時間労働や緊急手術が多いことなどを理由に、女性医師からは敬遠されがちな面もあるとされるが、松本さんは「学問的興味、やりがいを優先的に考えた。同級生も同じ考えの人が多かった」と語る。
 厚生労働省が2006(平成18)年度、初期研修医(2年次)に実施した調査によると、研修の前後で志望の専門科を変えた医師は全体の49.7%。初期研修の体験が、医師の進路に大きく影響している現状がうかがえる。
 一方、研修制度のデメリットを指摘するのは、研修病院で研修医を受け持つ指導医たちだ。
 「大変な科の実態を研修医が理解してしまい、嫌われる。初期研修が志望者の偏在につながっている」。東北厚生局(仙台市)で7月、東北各地の指導医が集まった講習会で、ある指導医が指摘した。「きつい科をただ『きつい』ととらえられるのは問題」との声も。数カ月ずつ各診療科を回る初期研修。特に外科系の指導医は、魅力を伝えるには期間が短すぎると、歯がゆさをにじませていた。
 診療科の魅力を研修医にいかに伝えるかは、指導医たち共通の悩み。本年度から研修プログラムの弾力化が始まったことも相まって、指導医たちの試行錯誤が続いている。
 


〒960-8648 福島県福島市柳町4の29

個人情報の取り扱いについてリンクの設定について著作権について

国内外のニュースは共同通信社の配信を受けています。

このサイトに記載された記事及び画像の無断転載を禁じます。copyright(c) THE FUKUSHIMA MINYU SHIMBUN