『医療危機 ’09ふくしまの現場から』TOP
 機能強化
【7】―2009.12.01
精神科医療を提供する県立矢吹病院。医療観察法の入院医療機関の指定について検討を始める
■心神喪失者等医療観察法 

 殺人など「重大な他害行為」を起こしながら、心神喪失などを理由に処罰されなかった精神障害者を、裁判所の判断で指定医療機関に強制的に入院、通院させ再発防止を図る制度。2005(平成17)年に導入された。
第4部
公立病院
 
― 医療観察「県内で」/住民への丁寧な説明必要  ―
 
 「県内に対してだけでなく、全国的にも重要な役割を果たすことができるようになる。病院現場としては前向きに考えている」。心神喪失者等医療観察法に基づく指定医療機関に、精神科医療を担う県立矢吹病院を指定する検討を始めるとの方針を、県病院局が改革プランに盛り込んだことについて、同病院の小川秀行事務長(54)はそう語る。病院の機能強化につながるとの思いからだ。
 「重大な他害行為」を起こしながらも、罪に問われない精神障害者に必要な治療を行おうと、2005(平成17)年に導入された医療観察法。国は、同法に基づいて触法精神障害者が入院する施設が全国で720床は必要としているが、厚生労働省医療観察法医療体制整備推進室によると本年度3月時点で、同入院施設は全国16で合計441床。東北地方では山形県の医療機関が指定に向けた準備を進めているものの、現段階では国立病院機構花巻病院(岩手県花巻市)の1カ所しかない。県内在住の触法精神障害者は、花巻病院など他県の施設に入院することになる。同病院でも「病床は常に埋まっている状態」(菅政彦同病院事務長)で、少ない施設に対象者が集中しているのが現状だ。福島地裁によると昨年1年間、県内の裁判所で同法の対象となったのは9人いる。
 県保健福祉部は「居住地から近い県内に入院した方が、家族の支援も受けやすい。入院施設の必要性を感じる」との認識だが、県立病院を運営する県病院局のある幹部は「医療観察は国の制度。入院治療は、果たして県が担うべき仕事なのか」と疑問を語る。
 本年度中に始めるとされている検討はまだ手付かずで、スタッフや設備を充実させることも必要になる指定をめぐっては、今後克服すべき課題が多いとみられる。
 指定に向けた方針が決まった際には、殺人、放火など「他害行為」を起こした触法の対象者を受け入れるという施設の性格上、病院周辺の地域住民への丁寧な説明は必要不可欠だ。小川事務長は「地域の理解が何よりも重要」と語る。
 


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