『医療危機 ’09ふくしまの現場から』TOP
 地域密着
【8】―2009.12.02
院内でのクリスマスコンサートを考案した兼子さん。今年の開催を目前に控え、リクエスト曲を募る箱を待合室などに置いた
■県立病院の地域連携の視点 

 県病院局は本年度まとめた改革プランで「地域との連携・共生」をうたい、地域の医療機関と連携し新規患者増加を目指すほか、健康講座やコンサートの開催により医療への理解促進を図るなどとしている。
第4部
公立病院
 
― 患者サービス重視/周辺診療所へも出前診察  ―
 
 県立宮下病院(三島町)の待合室に11月末まで置かれた手作りの箱。会津若松市在住のフルート奏者岩沢麻実さん(24)の院内クリスマスコンサートが16日に開かれるのに合わせ、患者やその家族がリクエスト曲を記入して入れるための箱だ。
 昨年から始まった院内コンサートは、音楽療法士の資格を持つ岩沢さんが待合室や病棟で演奏する。「フルートの柔らかで優しい音色が、高齢者の多い入院患者に好評です」と話すのは主任看護技師兼子香代子さん(53)。昨年、病院を「癒やしのある空間」に仕立てようとコンサートを企画した。兼子さんは合わせて、季節ごとの院内の飾り付けも提案。七夕の短冊や中秋の名月のススキ、クリスマスツリーなどが一年を通して院内を彩る。「入院患者にも四季を感じてもらえると思う」。
 採算面などから民間医療機関の立地が困難な過疎地域で医療を提供している同病院。病院独自の収益で自らの費用を賄うことは困難だが、不採算医療を担う県立病院として経営を継続することを決めている。常勤医5人は、周辺の診療所にも出向き診療を行う。
 「『心ある医療』が病院のキャッチフレーズ。漠然とした言葉だが、要は地域密着を心掛けるということ」と中川浩然事務長(47)。兼子さんの企画も地域密着を狙った活動の一環。同様の観点から、患者送迎バスを運行するほか、認知症予防などをテーマとした健康教室をスタートさせ、本年度約20回開く予定だ。
 地域からは隔週で診療を行う整形外科の拡大や、眼科開設などの要望があるが、医師不足から容易に応えることができない。せめて患者へのサービスを向上させたいとの思いが病院にはある。
 経営の赤字体質や医師不足など困難に直面しながらも、地域のより所として存続していこうとする病院。「不況で地場産業も振るわず、何となく暗い雰囲気。それでも地域のお年寄りに楽しんでもらいたい」。間近に控えたコンサートへの思いを、中川事務長はそう語った。
(第4部おわり)
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 連載「医療危機 ふくしまの現場から」第4部は、本社報道部須田絢一が担当しました。
 


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