『医療危機 ’09ふくしまの現場から』TOP
 医療は公共の財産
【番外編】―2009.12.30
藤田さん 吉田さん
「大学の魅力を高めたい」と語る藤田さん 「医療は地域で守るべきだ」と語る吉田さん
 医師不足でかつてない危機に直面する県内医療現場の現状をリポートした「医療危機 09ふくしまの現場から」。連載の締めくくりとして、医師の育成と定着に努める福島医大の医療人育成・支援センター長の藤田禎三さん(64)と、医師不足に悩む公立病院の立場から公立岩瀬病院長の吉田直衛さん(61)の2人に、地域医療を守るための考えを聞いた。
番外編
 
― 医師の県内定着が課題  ―
  福島医大に昨年4月に開設された医療人育成・支援センターは「教育は大学、研修は付属病院」と、従来は分けて考えられがちだった教育と研修を一体的にとらえ、それぞれの質を高めることが目的。特に卒後の臨床研修を充実させることで、県内に定着する医師を増やすのが狙いだ。
 「ただ医師の数が増えれば良いわけではない。(初期研修2年間の後に進む)後期研修は大学に進んだほうがメリットがあることを、学生や研修医にアピールしたい」。藤田さんは、医師の県内定着には大学の魅力を高めることが必要との考えを持つ。
 2004(平成16)年にスタートした新医師臨床研修制度の影響で、学生が大学での研修を敬遠する「医局離れ」が進んだが、同医大では、後期研修医の数は同制度開始以前の水準に回復しつつある。藤田さんは「大学の魅力を高める即効薬はない。教育と研修の質を高めていくという『王道』を進めるしかない」と話す。
 全国自治体病院協議会県支部長でもある吉田さんは「病院運営をしっかりさせるためには、医師がもう少しでも増えないと厳しい」と、公立病院共通の願いを語る。国に対し「医師の地域ごとの配置について、何らかのコントロールは必要。医師の人権も大事だが、医療が崩壊してしまっては地域の患者の人権が守られない」と提言する。吉田さんは「『地域の病院を守りたい』という意識が地元で盛り上がれば、われわれも何とか踏みとどまれる」とも語る。
 公立岩瀬がある須賀川市では「いわせ須賀川の地域医療を考える会」が組織され、コンビニ受診を控えるよう呼び掛ける活動などを展開している。「医療や教育は公共の財産。サービスは一方的なものではなく、みんなで守っていくという意識が必要」と吉田さんは指摘する。  (おわり)
 


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