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北の異変
ハクチョウの故郷シベリアの環境変化にも、県民一人一人のCO排出が深くかかわっている可能性がある=猪苗代町
第1部 熱くなるふる里

(10)解ける凍土 水位上昇 //飛来数減るハクチョウ//  (08.01.12)
 磐梯山を背にハクチョウが悠々と空を飛ぶ。猪苗代湖で長年ハクチョウの世話をしている鬼多見賢さん(60)は、「10年ほど前は最高5000羽ほど来ていたが、最近は3000羽ぐらい。年々減ってきているのは確か」と懸念する。
 県内に飛来するハクチョウの多くはコハクチョウ。「これはツンドラスワンと言われ、シベリアの永久凍土地帯で夏に水草が生えるころ繁殖している」と解説するのは、日本野鳥の会県内支部連合会の鈴木滋事務局長(69)。「飛来数に変動が生じるとすれば問題はシベリア。温暖化で凍土が解け、水位が上がって卵が駄目になる。幼鳥の飛来数が減る可能性はある」
 地球温暖化は、北極に近い地域ほど温度上昇の幅が大きい。雪と氷の世界はその白さゆえに太陽光をはね返しているが、一度解け始めると太陽エネルギーを吸収しやすくなり、悪循環を加速するからとされる。
 温暖化は、海流の乱れや海域の温度上昇も招く。浜通りの河川を毎年さかのぼるサケも将来、温暖化の影響にさらされると懸念されている。
 北海道大の帰山雅秀教授たちの研究によると、日本の河川でふ化した日本系サケはオホーツク海で成長するが、地球温暖化の影響で50年後にはオホーツク海に適温域がなくなる恐れがあるという。
 県水産グループによると、昨年秋に本県沿岸や河川に戻り捕獲されたサケは約45万匹。ここ5年間では最も多い豊漁となったが、2000(平成12)年のように16万5000匹と極端な不漁の年もある。「あの年は、どの川もなぜか捕れなかった。川の水温が高い年もサケの戻りは遅くなる」と、泉田川漁協(浪江町)の山崎善二郎事務局長(70)は、水温に敏感なサケの実態を紹介する。
 アクアマリンふくしまの繁殖育成課の松崎浩二副主任(33)は親潮に乗ったオキアミやコウナゴの南下の遅れを見てきた。「漁師さんは魚が減ったと言っている。一方、西日本に多い伊勢エビがいわきの海にも結構いるので展示している」
 海の変化は、漁業への影響ばかりではない。野鳥の会の鈴木事務局長は浜通りの海岸からめっきり減った渡り鳥コアジサシについて「餌のカタクチイワシなど回遊魚が本県沖まで南下しないことがあり、浜通りの河口などで繁殖できないのも一因ではないか」という。
 県民の足元で身近に起きている環境変化。一つ一つには気付いても、それを関連づけた研究は少なく、ましてやその環境変化から県民生活や産業、自然環境を守る戦略立てた対応は、まだない。=第1部おわり
   
 


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