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『環境’08 ふくしまを守る』トップ

   
 
原発立地地域
新検査制度について地元で開かれてきた説明会では、地元住民から慎重な意見が出されてきた=写真は今年6月に富岡町で開かれた県原子力発電所所在町情報会議
第5部 環境社会へ

(2)安全確保求める住民 //Co削減の説明に注文//  (08.12.02)
 原子力発電所の設備を点検する検査制度が、来年度から新しくなる。点検の定期検査の間隔が長くなり、これまで以上に稼働率が上がることが想定される。原発の稼働率が上がることで、化石燃料を使う火力発電所の稼働率を抑えられるとの見方があり、地球温暖化対策の側面に限っては電力業界などは原発の稼働率向上を二酸化炭素(CO)の排出削減に貢献すると位置付けているが、原発が立地する本県では新検査制度の検討段階から導入への慎重意見が出されてきた。

 経済産業省原子力安全・保安院福島第一検査官事務所の志間正和所長は「保全活動をしっかりやるという観点から導入する。二酸化炭素の排出削減が目的ではない」と話すが、電気事業連合会は今年5月に発表した「低炭素社会の実現に向けた電気事業の取り組みについて」で、全国の既設原発の稼働率が1%向上した場合、約300万トンのCOの排出が削減されるとの試算を出した。

 環境対策の面から原発の稼働率を上げようという考えとは裏腹に、原発立地地域からは、安全性の面から新制度へ注文を付ける声が聞かれる。国はこれまで「長期的な運転計画の提出義務化などを通じて安全性は向上する」などと立地地域に理解を求めてきたが、同町の男性は「国の制度なので仕方のないことだが、安全性はしっかりと確保してほしい」と話す。

 一方、原発の定期検査は地元の経済と密接にかかわっているだけに、新検査制度の導入をめぐって立地自治体では、環境と安全、地域経済の振興という相反するさまざまな問題が複雑に交差する。

 双葉町で建築業を営む女性は「環境問題が大切なのは十分に分かるが、環境を優先して仕事がなくなっても困る。立地地域の経済は原発の動向に左右される」と胸の内を明かす。定期検査には安全性の検査や設備のメンテナンスなどに大勢の作業員がかかわるだけに、定期検査が減ることによる雇用減少や消費の落ち込みなどを心配する地元関係者は多い。

 安全性の確保と地域振興に、環境問題をどのように関係付けるか。国や電力会社が地元の理解を求めることが欠かせない。
   
 


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