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死なない病害虫
死なない病害虫
暖まりゆく都市の近郊で、冬の日差しを浴びる水田=郡山市富久山町
第1部 熱くなるふる里

(5)越冬可能で影響懸念 //斑点米被害増加の傾向//  (08.01.07)
 水稲の豊かな実りをもたらし、静かに春を待つ県内の水田地帯。地球温暖化によるコメへの影響は、コシヒカリなど主力品種と夏場の適温との関係で語られることが多い。しかし、冬場の水田にも地球温暖化の深刻な影響が隠れているという指摘がある。
 温暖化により、かつては困難だった病害虫の越冬が可能になるという懸念だ。実際に温暖な西日本を中心に、病害虫による被害が顕著になってきている。
 県農業総合センター内の県病害虫防除所は「冬の最低気温が10度ほど上昇した場合」という極端な変化を前提とした上で、「西日本のように県内でも病害虫が越冬し、生息分布が拡大する可能性は否定できない」と説明する。
 県内で農作物に影響する病害虫は約百種類。屋外で越冬したことによる農作物の被害拡大は確認されていないが、パイプハウスなどの加温施設を冬場も設置しておくことが増え、ここで病害虫が越冬、春に活性化する例は指摘されてきた。
 福島地方気象台の福島市での観測データを基に、福島大の渡辺明教授が分析したこの100年間の月別気温変動では、夏場の6―9月には1度前後の上昇なのに対し、最も気温上昇が激しかった5月は約2度、10月から4月にかけては1.7度から1.2度上昇しており、冷涼な季節ほど気温上昇が大きいことが分かっている。同市は夏場の厳しい暑さに加え、秋冬も暖かくなることで、年間の気温変動グラフが緩やかにカーブする「亜熱帯」になりつつあるという。
 一方、本県の農業産出額の約6割を占めるコメ生産で今、危険視されているのがカメムシの大量発生。実を結んだコメにカメムシが穴を開けて汁を吸い、その跡が変色、斑点になって商品価値を落とす「斑点米」の被害が増加傾向にある。
 農林水産省のデータでは、カメムシ類は国内に約65種、このうち水稲に被害をもたらすのは十数種。県内の専門家は、カメムシの発生が増えている背景として、水田の隣に牧草転作地や休耕田、耕作放棄地などが増えたことでイネ科の雑草が増え、害虫の供給地になっている可能性があると目を光らす。
 ただ、地球温暖化など地球規模で起きている気象変動との因果関係については、十分な研究が進んでいないのが実情だ。亜熱帯化による病害虫の越冬や農地の荒廃など環境の変化が重なると、予想を超えた事態が襲来しかねない
   
 


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