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昆虫が告げる変化
昆虫が告げる変化
郡山市で小林潤一郎氏(福島虫の会長)が撮影したツマグロヒョウモン
第1部 熱くなるふる里

(6)生息域が拡大し北上 //既存種環境脅かす存在//  (08.01.08)
 子どもたちの思わぬ大発見だった。郡山市・東部ニュータウンの緑ケ丘一小で昨年9月20日、総合学習で自然観察会に参加した2年生たちが、1匹のオレンジ色のチョウを捕まえた。指導していた福島虫の会の小林潤一郎会長(66)は「すごいぞ。これはツマグロヒョウモンといって、関東より南の方にいるチョウなんだよ。台風に乗ってこんな遠くまで来たのかもしれないね」と声を掛けた。子どもたちの目が輝いた。
 昆虫専門家の間では、ツマグロヒョウモンの生息域の北限は二十年前まで関西で、最近は関東まで広がったとされる。同会が会員からの観察記録を克明に記した会報によると、県内での初観察記録は1992(平成4)年の猪苗代町。その後も2001年に伊達市梁川町で記録されただけの珍しいチョウだった。
 同校近くに住む小林会長は、子どもたちの大発見の後の10月12日、道路際の花壇で同じチョウがたくさん飛んでいるのを目撃。急いで採集しただけでもオス3匹、メス1匹が確認できた。「これは郡山でも毎年見られるようになったということでは」と話す。
 チョウの生息域の拡大例では、ウラギンシジミもある。チョウ研究では県内第一人者の角田伊一氏(三島町)が82年に出版した「福島県の蝶」によると浜通りまでが生息域だったウラギンシジミが、今は中通り、会津でも見られる。
 県農業総合センターの三田村敏正主任研究員(47)はコオロギの仲間のアオマツムシの北上を指摘する。草むらにいる国産種と違い、木の上で鳴く外来種で、東京以西の街路樹で初秋の夜に鳴き声を響かせる。
 「子どものころの図鑑では『九州にしかいない昆虫』だった。それが近年では東京にたくさんいる。県内でも十数年前に見つかったが、今は福島市や郡山市で毎年見られるようになった。冬を越していると考えられる」と三田村主任研究員。懸念するのは県内の「亜熱帯化」だ。「小さなことのように見えても、大きなスパンでみれば気候変動を示しているのかもしれない」
 県内の昆虫愛好家たちが今注目しているのは、クマゼミの北上。「原爆慰霊祭の広島からの中継で、バックでにぎやかに鳴いているのがクマゼミ。国内では最大のセミで、関東までが生息域だった」と小林会長が解説する。「これが、かなり北上しているらしい。県内に入るようなことがあるかもしれない」。
 開発により生息環境が悪化している北の昆虫たちに、新たな難敵が忍び寄っている。
   
 


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