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 消費税増税 
 
  新たなバラ撒きが心配

 消費税増税法案が成立した。一括審議されるべき社会保障制度改革の議論は積み残しになったが、とにもかくにも一歩踏み出した点は評価に値する。総選挙後に、残された歳出面の議論が速やかに行われ、財政再建への道筋が一層明確になることを期待したい。
 ただ法案成立後の報道の論調には違和感を禁じ得なかった。テレビは挙(こぞ)って家計の負担増や増税分の価格転嫁に不安を訴える企業経営者の声ばかりを取り上げる。そこには財政再建の意義を論じる視点など微塵(みじん)もない。揚げ句の果てには「増税に見合うだけの社会保障給付の拡充が増税容認の大前提」などと解説する始末。この程度の税率引き上げでは、現在の給付水準の維持すら不可能という事実を知りながらの無責任極まりないコメントだ。
 先日、自分を訪ねてきた旧知の元財務官僚曰(いわ)く、「増税の見返りで歳出規模は膨らむから、増税先行では財政再建に繋(つな)がらない」。政治の機能不全を前提とした講釈には反発を覚えたが、再度空転する国会情勢を見ると、現実はそうした方向に向かっているとも思う。
 苦労してこぎ着けた増税が新たなバラ撒(ま)きを伴うとすれば、また元の木阿弥(もくあみ)。こうした繰り返しが後戻りの利かない真の財政危機を招いたとき、われわれは再び「想定外」という言葉に遭遇する。 


けいざい散歩


2012年9月3日付
福島民友新聞に掲載

 

 

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