【硬VS軟、桃対決】産地お薦め、硬くて甘い

 
今の季節は川中島白桃が最盛期を迎えている(桑折町)

 本県を代表する夏の農産物の一つ、桃。軟らかくて果汁たっぷりで...というイメージだが、産地ではサクサクした歯応えの「硬くて甘い桃」が好まれているという。食べ慣れた軟らかい桃とは何が違うのか。産地ならではのおいしさの秘密を聞きに「献上桃の郷」桑折町へ向かった。

購入日が食べ頃

 「むくと果汁がしたたるような桃は、俺らは捨てちゃうなぁ」と笑うのは、「断然硬い桃派」の伊達果実農協(桑折町)組合長、佐藤邦雄さん。「でも、都会の人は軟らかいのが桃だと思っているんだよね」

 確かに、缶詰の桃のように軟らかく、するりと皮がむけるぐらいが食べ頃だと思っていた(都会人ではないけれど)。とはいえ、「硬い桃イコールまだ熟していない」という長年の思い込みもあり、硬いと甘くなさそうな気がするが...。

 「硬いからといって熟していないわけではない。軟らかいものと同じ糖度がある。品種にもよるが、その硬さが食べ頃」。硬そうに見えると、買った後も軟らかくなるまで数日放置したくなるが、「店頭に並ぶ日が食べ頃になるよう逆算して出荷しているから、買ったその日に食べてほしい」と佐藤さん。産地の直売所なら、その日に取った桃が買えるという。

 硬めが好きな人にお薦めの品種は「まどか」。取れたてはリンゴのように硬くて甘いという。軟らかい方が好きという人に一押しの品種は「あかつき」。今は「川中島白桃」が最盛期を迎えている。その後「ゆうぞら」「さくら」などの晩成種が続き、9月になっても県産のおいしい桃が楽しめるそうだ。

 また、桃は冷蔵庫で保管すると甘みが弱まってしまうので、冷えた桃が食べたいときは、食べる直前に冷蔵庫で冷やすのがお薦めだそう。

品種で味比べを

 硬い桃を知らない人だと、初めて食べたときは「この硬さで食べてよかったのか? 早過ぎたのでは?」と不安になるかもしれない。だから、一度は産地で「これが硬くて甘い桃」というお墨付きのものを試してみることがお薦めだという。それでも「やっぱり軟らかい方が好き」という場合は、数日置けばおいしく味わえる。

 「桃に限らず他の果物や野菜でも、品種が分かると買い物や味比べが楽しくなる」と佐藤さん。せっかく産地に住んでいるのだから、取れたてを食べ比べて好きな品種を見つけて、福島のおいしい桃を全国に自慢したい。

 余談だが、桃の産地に暮らして十数年、「桃は硬い方がうまい!」と周囲から洗礼を受け続けてきたが、「熟した桃は軟らかい」という幼い頃から深く染み付いたイメージから、実はいまだに抜け出せずにいる...。(佐藤香)