【ラーメンの好みの麺太さは?】細麺劣勢 会津は太麺派

 
たんぽぽ亭の喜多方ラーメンはちぢれの入った中太(13番手)の薄出し麺

 日本人は本当にラーメンが好きだ。中でも福島人のこだわりは熱い。そこで今回は「あなたは太麺?細麺?」。県内のラーメンを麺の太さで探訪する。

全体の味を左右

 まず読者のお便りから。「太麺が好き?細麺が好き?」の質問に、いわき市の山崎さん(31)は「小さい頃、植田のショッピングセンターの食堂で食べたラーメンが中太麺でした。近くのチェーン店も中太麺。食べ慣れたラーメンはみんな中太麺で、細麺では物足りません」。三春町の滝桜子さん(49)は「手打ち太麺ちぢれが好きです。白河、喜多方ともに太麺ちぢれが多いですよね。福島県人だからでしょうか?」。福島市の帆乃丸ままさん(56)は「つるつると喉越しの良い細麺派でしたが、喜多方ラーメンを食べてから断然太麺派!しこしこの太麺に絡むスープと歯応えがたまらない」。

 かくして中太麺、太麺が人気との結果。細麺は「上品で食べると幸せ」(いわき市・久保木さん78歳)の声もあるが劣勢だ。理由は〈1〉身近な店では中太麺が多い〈2〉太麺といわれる喜多方、白河の二大ご当地が影響している―と推測できる。

 さて麺の太さについて少し整理する。福島市のそば店、山口屋の店主、斎藤勝雄さん(68)は「うちでは、そばとラーメンの麺は20番手、うどんが7番手」と言う。番手は、製麺機の麺を切る刃と刃の間隔を表す数字。具体的には30ミリの間に並んだ刃と刃の隙間の数で、20番手なら隙間は20、つまり麺の幅は30ミリ÷20=1.5ミリ。7番手は4.3ミリとなる。

 では麺の幅が違うとどうなるのか。「細い麺はつゆが絡みやすく、太い麺は絡みにくい。例えば、太麺に合わせたつゆで細麺を食べると、しょっぱく感じる」と斎藤さん。つまり全体の味を左右するのだ。

出前向き、太めに

 なるほど、山口屋のラーメンは、細く感じる麺(20番手は細くはないが)と、だしが効いた優しい味のスープの組み合わせだ。いわき市の山崎さん(64)も「しょうゆラーメン、あんかけは細麺。みそは太麺、特に丸太麺が最高」と、麺とスープには相性があると強調する。

 では喜多方ラーメンなど太めの麺の人気が高い理由は何か。

 たんぽぽ亭(喜多方市)店主の渡部尚之さん(58)は「喜多方で一般的な麺の幅は12~14番手(2.5~2.1ミリ)。その前は少し太い10~12番手だった。実は大正から昭和初期、当初の麺は中国風で細かったが、昔は出前が多く、麺が伸びにくいよう太くなったと聞く。その後、喜多方ラーメンの特徴のプリプリ感とうま味を実現する多過水熟成麺も開発され、今の太さに落ち着いた。最近は麺の厚さも調整でき、各店がスープも含め個性を競っている」と時代に対応した変化を語る。この進化が県内中に影響しているようだ。

 最後は郡山市・ますや本店の店主、柴原久男さん(66)に総括してもらおう。柴原さんは「麺の太さの基本は地域性」と言う。同店では、麺を太、中太、ちぢれ、細の4種類、スープも3種類から選べる。それだけに「太麺を頼む人の車は会津ナンバーが多い。逆に、昔は細麺が多かった郡山など県中の人は、太麺に少し違和感がある。慣れ親しんだ味が一番」と分析が細かい。

 しかし麺が4種とはすごい。「郡山は交通の要衝で、方々から人が集まる。それに、私が明治からの老舗を継いだのが、1990年代のラーメンブームの最中。多様化するお客のニーズに応えた結果」と柴原さん。麺の太さは時代に敏感なのだ。(鈴木博幸)