【まぜご飯の呼び方は?】「味ご飯」中通りで圧倒的

 
しょうゆを入れて炊いたご飯に、煮込んだシイタケ、ニンジン、油揚げをまぜた「わが家の味ご飯」

 前回に続き、県内のご飯事情を調査する今回のテーマは「味ご飯」。炊き込みご飯やまぜご飯のことを県内では「味ご飯」と呼ぶことが多く、使う人にとっては方言とは思わないほど浸透している言い方だ。

リスナー情報も

 今回初めて、ふくしまFMの情報番組「福空間~フクスペース~」と連動し、味ご飯に関する情報を番組内で募集した。

 進行役を務める、大阪府出身の北村茉倫(まりん)アナウンサーは「味ご飯は、意味は理解できるけれど自分から言ったことはない」と話す。しかし「わかめご飯も味ご飯の仲間?」など、福島県民の味ご飯の解釈に戸惑っている様子だ。

 県内外のリスナーと、本紙の読者から届いた情報をまとめると、圧倒的に中通りで使われている呼び方だということが分かった。「よそでは違うんですか?」(郡山市)、「これって県内だけの呼び方なんですか?」(福島市)などの戸惑いの声からも、味ご飯という言葉の浸透具合がうかがえる。

 一方、「味ごはんというワードに違和感」(会津若松市)、「まぜご飯とか五目ご飯と言ってました」(会津地方)、「味ご飯と言う人は周りにいません」(浜通り)など、中通り以外では味ご飯派は少数だ。

三重でも浸透

 そんな中「三重県でも味ご飯と言いますよ」という気になるメッセージが。早速、三重県広聴広報課に問い合わせてみた。担当者によると、発祥や由来は不明だが、同県でも味ご飯という呼称が当たり前に使われているという。ちなみに、同県に本社を置くおにぎりチェーン店のメニューには、サケや梅と並んで「味」とだけ書かれているという。「味ご飯」でも「味めし」でもなく「味」の1文字。潔い。

 なぜ同じ呼び方が離れた場所で局地的に広まったのだろう。方言を研究する福島大の半沢康教授に聞くと「味が付いたご飯のことを表すという発想なので、同じ言い方が違う場所で生まれてもおかしくない」という。また、構成要素「味+ご飯」はどちらも共通語なので、「味ご飯」が地域特有の言い方とは思わない人が多いと推測する。

 では、なぜ中通りで多く使われているのか。大正の終わりから昭和の初めごろの本県の食生活を記述した書籍「日本の食生活全集7 聞き書 福島の食事」(農山漁村文化協会)によると、福島北部盆地(福島市)、福島南部(古殿町など)、阿武隈山地(田村市、二本松市など)、石城海岸地域(いわき市平豊間など)の特別な日の食事の例として「味つけ飯」が挙げられている。どうやら、かつて中通りを中心に作られていた「味つけ飯」が、呼びやすさや丁寧さから「味ご飯」に変わっていったのではと推測できる。

 さらに同書の「会津盆地の食」の項には「混ぜごはん」が記載されている。現在も会津地方ではまぜご飯派が優勢なのは、昔からの流れのようだ。

 とはいえ、呼び方は違ってもおいしさは同じ。好きな具材を炊き込んで、秋の味覚を楽しみたい。(佐藤香)