【わが愛しの食堂】大盛り、ほのぼの心満腹

 
割烹山晴の「焼き肉定食」(左奥、800円)と「アジフライ定食(手前、700円)。ご飯も盛りは見た目以上にすごい

 おふくろの味と言いつつ、人はお店の味にひかれる。今回は「食堂」の話。読者と、ふくしまFMの番組「FUKU―SPACE」のリスナーに「わが愛(いと)しの食堂」を語ってもらい、魅力のポイントを探った。

 マウス大唐揚げ

 まず、笑みがこぼれる投書から。猪苗代町の台湾料理の店で「ランチが爆盛りと知らず、メニューの『ランチにプラス100円でスープをラーメンに代えられます』の文にひかれ頼むと、大盛りランチと普通のラーメンがどんっ! 面食らいました」。

 このカルチャーショック、身に覚えのある人は多かろうと思っていると...「大学近くの大衆食堂はかなりのボリュームで、ザンギ(鶏の唐揚げ)1個の大きさがパソコンのマウスくらいでした」(伊達市の道産子)など、「大盛り系」の投書は全体の約3割を占めた。中には、田村市のS食堂を推す投稿者の「お昼に食べると午後からの仕事がある意味キツカッタですね」といったリアルな告白も。

 もう一つ目立つのが、家族や友達と結びついた、ほのぼのした思い出だ。「食堂には母が生きていた頃に家族で行きました。お薦めは田村市にある中華屋さんで、みそラーメンがおいしいです」。町中華巡りが趣味という投稿者は「会津若松市の中華Jはアットホームで、すぐ好きになりました。味も最高!今では家族で行くほど!」。

 どうやら、この「大盛り」と「ほのぼの」が、食堂を語るときの二大キーワードのようだ。さらに「(福島市のBドライブインは)冬は座敷にコタツがあり、トラックドライバーさんたちが休んでいて、家庭的な雰囲気が好きでしたね」との投書のように「働く人たちの熱気」も見過ごせない。ただ、投書の約半分が思い出話。そこが気になる。なので近所の店に出かけた。

 店主の気配り

 福島市の割烹山晴(かっぽうやまはる)は、昼時はサラリーマンや近所の人たちでにぎわう。ここで焼き肉定食とアジフライ定食を注文した。主菜には千切りキャベツとポテトサラダ、ナポリタンが添えられ、ご飯とみそ汁、漬物が脇を固める。

 そこに早速キーワード「盛りの良さ」を発見した。ご飯が結構な量だ。だが、焼き肉の濃いめの味によって、米が滞らず胃へと送り込まれていく。味のマジックである。ご飯の量を聞くと、女将(おかみ)の福田幸子(ゆきこ)さん(69)と、夫で店主の敏雄さん(70)が、その場で量ってくれた。約370グラム! ファミレスの倍くらいか。

 「量はお客さんの様子を見て調整します。女性の場合は少なめに盛って『少なかったら言ってください』と声をかけたり」と店主夫妻の長男で2代目店主の高明さん(38)。加えて裏技も教えてもらった。酢飯は、通常の白米に比べ胃がもたれにくいらしく「定食のご飯を酢飯に代えて」と頼む客が何人もいるとか。

 盛りの良さは、今も町の食堂にとって譲れない一線かもしれない。苦戦する客がいても、そこは店主たちが気配りや工夫で調整する。その温かさが、またファンをつくるのだろう。(鈴木博幸)