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放浪記
生誕100年記念
放浪記
古関の妻金子(前列左端)の声楽の師ベルトラメリ能子氏(前列左から2人目)を囲んで(昭和16年、古関裕而記念館提供)
斎藤 秀隆 (福島東稜高教員)

(38)2009.11.23

舞台音楽に古関メロディー
 今年の5月5日から「放浪記」の2000回達成記念公演が始まりました。注目は主演女優森光子が89歳の誕生日を迎えることと、2000回公演の達成でした。それはまさに前人未到の一大イベントでした。ところで、なぜ「放浪記」なのでしょうか。「放浪記」こそ、わが敬愛する菊田一夫作品であり、古関が音楽を担当しているのです。
 森の「放浪記」スタートは1961(昭和36)年、41歳の時でした。森は倦(う)まず弛(たゆ)まず、女流作家林芙美子を演じ続け、今もって大衆に生きる力と元気を与えているのです。森は当初、俳優嵐寛寿郎の姪(めい)としてデビューしたそうですが、実は1920(大正9)年生まれ、3歳ほど年齢を偽り、嵐の従妹(いとこ)だったそうです。その後、菊田に見いだされ、東京に出て大輪の花を咲かせたのでした。
 森は今回の舞台に先立ち、肉体改造に取り組んだようです。なんでもスクワットを150回から200回に増やしたとのこと。「齢よわい卒寿目前にして」です。
■筋を暗示させる魔力 
 新派の舞台音楽はミュージカルやオペラとは異なり、幕が上がる直前の前奏と劇中音楽がメーンです。そのうち、古関音楽が真価を発揮したのは、第二幕のカフェー「寿楽」の女給たちの嬌声(きょうせい)と喧騒(けんそう)ぶり、第三幕冒頭の故郷尾道での心情告白の場の「子守歌」でした。これこそ聞き覚えのある古関メロディーだと胸がジーンと熱くなりました。幕が変わるたびに流れる演奏は、これから始まるストーリーを予感させ、あらすじを暗示させる魔力が潜んでいました。
■舞台には人生の真実 
 ところでフィナーレの第五幕になると、登場人物である菊田がやけに目立ってきました。これは原作者の特権であり、菊田の遺言でもありました。劇中の菊田の「生まれる時も一人、死ぬ時も一人」とは、言い得て妙でした。古関は「舞台音楽は書いていてとても面白いですね」と述べていますが、我々(われわれ)こそ、「舞台には涙も笑いも人生の真実も詰まっていて、こたえられないですね」と感謝したいものです。
    メ  モ  
 古関の舞台作品 
 1955(昭和30)年、菊田一夫が東宝に移籍してから古関は舞台音楽の作曲に専念しました。「舞台音楽やミュージカル、映画主題歌やラジオ・テレビのテーマソングと、多忙な中にも実に楽しい愉快な日々の連続であった」と自伝で述べています。  

 


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