【地域を売り出せ(2)】ノウハウ地域に還元 青森・五所川原農林高
◆グローバルGAP認証取得を後押し
青森県五所川原市の五所川原農林高(菊地建一校長、生徒404人)は本年度、これまで蓄積したノウハウを生かした新たな取り組みを始めた。
農産物の安全性などに関する国際規格グローバルGAP(ギャップ)の認証取得を目指す農業者を、生徒が指導する「高校生コンサルタント」だ。同校は今夏、むつ市のブドウ生産法人と連携協定を締結、地域資源の豊かさを再発見しながら「下北ワインの全国ブランド化」を後押ししている。
◆コンサルタント挑戦
同校は8月2日、むつ市川内町の農業生産法人「エムケイヴィンヤード」(北村良久社長)と、ワイン用ブドウのGAP認証の取得を支援する連携協定を締結した。
同法人は、下北ワインを製造・販売しているサンマモルワイナリーのグループ企業で、原料のブドウを生産している。
締結式には同校グローバルGAPチームのメンバーで、コンサルタントを務める3年の加藤雅也さん、小野綾香さん、工藤未来さん、2年の加藤雄己さんの4人が出席し、セレモニー終了後、同社圃(ほ)場管理部の工藤和幸さん(22)の案内でブドウ畑などを見て回った。
GAP認証取得には、農薬の管理など200項目以上の審査がある。同校は、ソフトウエア企業NECソリューションイノベータ(本社・東京)のGAP認証支援サービスを利用し、インターネットを通じ、法人の生産管理状況や現地の点検結果などをチェック。これまで農薬、資材の保管方法を改めるようアドバイスしている。
コンサルタントを務める同校の工藤未来さんは「施設を改善するのにも、会社には予算があるので大変だった。でもやりがいがあった」と話す。
一方、生徒たちからアドバイスを受けた同社の工藤和幸さんは「農機具と資材を一緒に保管していたが、別々にするように改善した。生徒の説明は専門用語を易しい言葉に言い換えて分かりやすい」と評価する。
同校のグローバルGAP取得は、地域の農業を担う生徒たちに国際性を身に付けてもらおうと、2015年度から始まった。認証品目はリンゴ、コメ、メロンと増え、現在、ジャガイモでの取得を目指している。
さらに、GAP取得のノウハウを地域に還元するとともに、生徒自らも学んだことを検証しレベルアップしようと、本年度から「高校生コンサルタント」をスタートさせた。
コンサルタントは生徒たちにとって、実社会で働く人たちと接し、多くの刺激を受ける機会にもなっている。1年前までは人前で話すのが得意ではなかったという小野さんは「これほど人前で話せるようになるとは思っていなかった。GAPの取り組みで多くのことを経験して自分を変えることができた」と話し、加藤雅也さんは「改めて農業の魅力を感じた。将来は農業をしたい」と力強く語る。
菊地校長(57)は「生徒たちと話していると、真摯(しんし)な姿勢と自分たちの取り組みに対する自信、プライドを感じる。GAP取得やコンサルタントを通して成長する様子が手に取るように分かる」と取り組みの成果に自信を深めていた。 (東奥日報社五所川原支局・三浦博史)
【応援してます】
◆効率的に情報を共有 中橋賢一さん
青森県北部、下北半島の陸奥湾に面したむつ市川内町に本社を置く農業生産法人「エムケイヴィンヤード」と、津軽平野に位置する五所川原市の五所川原農林高は、高速道路を利用しても、車で片道3時間ほどかかる。
高校生コンサルタントを実施するにあたり、この距離を埋めたのが、NECソリューションイノベータのGAP認証支援サービスだ。両者が同サービスを使うことで生産情報を共有し、点検・チェックと改善が効率的にできるようになった。
担当の同社スマートアグリ事業推進本部の中橋賢一さん(48)は、個人的にも「食」やGAPに関心を持ち、同校が国内の高校で初めてグローバルGAP認証を取得した当時から注目してきたという。サービスの担当者として利用法を説明、提案するだけでなく、生徒たちのよき相談相手でもある。
「自分や自分の家族、周りの人がおいしいものを食べ続けられる世界が続く。それが自分の願い。農業や食の未来を支える人材を育てる五所川原農林高の取り組みに協力できることはなによりの喜び」と話す。
◆現場では技術学べる 北村良久さん
高校生コンサルタントの活用を決めた「エムケイヴィンヤード」の北村良久社長(53)は、GAP認証取得に取り組むことで農作業現場の安全面、衛生面を確立することが目的と説明。「外部の認証制度を活用し、従業員の健康管理と労働環境の安全性を高めたい。社員も高校生が指摘してくれたことに対して『できません』とは言いにくいのではないか」と期待する。
また、コンサルタントに関する連携協定締結を機に、同校にワイン用ブドウの栽培も提案している。「ワイン用ブドウの栽培に関心を持つ生徒がいると聞いた。生産現場に足を運べば栽培技術を学ぶこともできる。将来、五所川原農林高で栽培したブドウでワインを造ってみたい」と思いを語った。
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