【 二本松・旧裏町 】 人と人...結んで元気に 社交場的な感覚がいい
本町は旧二本松藩城下6カ町の一つ。旧大手門に面した平らな地で、郭内にあった本町の地名を江戸初期の町割りの時に移し「本町の裏」で裏町になったという。当時は町家のほか、「小役人屋敷」があり、足軽などが住んでいたようだ。
戦前、裏町の商店街はお座敷式の料亭や小料理店が多く、芸妓(げいぎ)置き屋などもあり歓楽街としてにぎわった。
戦後には映画館が進出し、小料理店はカフェやバーなどに模様替えするなどしたが、町は衰退していった。「裏町=暗い」を連想させることから、明るいイメージを浸透させようと、1954(昭和29)年にまゆみ通りに改称した。
◆飲食店タッグ
通り沿いでは「飲食業で二本松を元気にしたい」と意気込む人たちが店を構える。ちゃんこ鍋や焼き肉が味わえる「みやぎ野」の店内は力士の手形や絵、写真などの相撲グッズであふれる。座敷の一つ一つには大相撲の相撲部屋の名前が付く。相撲好きの先代が割烹(かっぽう)から始め、創業約50年。2代目の三浦邦昭さん(73)は「相撲好きな人もそうでない人も、店内の雰囲気を楽しんでもらえる」と笑顔を見せる。
通りがにぎわいを見せるのは秋。毎年2日間にわたり、約30店から3店を選んで飲み歩いてもらう「ほろ酔い裏町探検夢探検!」が展開され、通りを歩く人が目立って増える。
当初から実行委員長を務める三浦さんは「遠方から来た人たちをもてなす場にもなっている。裏町時代までには届かないが、各店が工夫を凝らしている」。にぎわいを取り戻そうと、隣、近所同士が仲良くしながら店に立ち、客を待つ。
宴会の1次会や2次会はもちろん、次の店に行くまでのつなぎだったり、最後の締めに立ち寄ったりと、旧裏町の利用の仕方はさまざまだ。煩わしくない程度の距離感で隣の人とも話せるなど、社交場的な感覚がいい。
≫≫≫ ちょっと寄り道 ≪≪≪
【そばとのセットメニュー人気】おいしさとメニューの多さから老若男女に親しまれている「やなぎや」は1907(明治40)年創業の老舗。そばをふんだんに使った料理がメインで、伝統の味で消費者のニーズに応えている。うな重、ソースかつ重とのセットも人気がある。
〔写真〕老若男女に親しまれている「やなぎや」
( 連載「まちかど物語」は今回でおわります )
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