【まち中華物語】味の菜華・石川町 二人三脚、50年目指す

 
店主の緑川和久さん(左)と、妻のスミ子さんが二人三脚で切り盛りしている(吉田義広撮影)

 「ごちそうさま」。食事に満足した客のあいさつに、味の菜華の厨房(ちゅうぼう)からは「どうも、毎度」という威勢の良い男性の声と、「ありがとうございました」と明るい女性の声が響く。店は「マスター」こと店主の緑川和久さん(70)と妻のスミ子さん(70)らが切り盛りしている。

 店は1977(昭和52)年12月、2人が現在の場所に開いた。和久さんには横浜市の中華街などで修業した経験がある。周辺には中華料理店がなかったこともあり、オープン当初から店に客足は絶えなかった。現在も提供する五目ラーメンや五目焼きそばなどは当時からの人気メニューだ。

 繁盛した背景には、もちろん努力もある。和久さんは「オープンから500日は休まない」と決め、体調が悪くて、親戚に止められても休むことはなかった。「若かったから、とにかく夢中だった」。スミ子さんも出産までの短い期間を除いては一緒に店に立った。マーボー豆腐など、本来だと香辛料を多く使うメニューは、中華料理になじみがなかった地域の人の口に合うように、辛さを和らげるなど工夫を凝らした。

 オープンから40年以上たった今も和久さんは「あちこちから来てくれる人がいる」と妥協を許さない職人気質だ。スミ子さんは「マスターは基本的には真面目なの」と笑う。

 「基本的には」という言葉の裏には、和久さんの若かりし頃の数々のエピソードがある。聞けば、なかなかやんちゃで、けんかっ早かったらしい。今では優しい笑顔を見せるが、その風貌はスキンヘッドに顎ひげと「こわもて」の言葉がふさわしい。

 そんな和久さんに対して、ちゃきちゃきしたスミ子さんも負けていない。

 改修は10回以上

 忙しい時間帯の厨房は「戦場」だ。料理の出来にこだわりたい和久さんと、少しでも早く客に提供してあげたいスミ子さん。互いに厳しい口調で注意し合うこともある。スミ子さんは言う。「言い合ってたら、従業員の子に『外に聞こえますよ』なんて言われたこともあったり。仕事の時は夫婦と言うより『戦友』かな」

 だが、仕事が終わると、たいてい2人で晩酌をする。話し始めると、話題は尽きない。

 和久さんは「いろいろな思い出があるな」と振り返る。店の敷地にはディスコやパブ・スナック、ゲームセンターを設けたこともある。アイデアを思い付けば、すぐに実行した。店の建て替え、改修は大、小合わせると10回以上に及ぶという。

 現在は新型コロナウイルスの影響が少なからずある。しかし2人に笑顔は絶えない。スミ子さんは「暗く生きるも人生。明るく生きるも人生」と笑い飛ばす。

 業態を見直すなどして、店は一時期よりは小さくなった。それでも和久さんは店内を見渡し「今の店構えが一番いいかな」とつぶやく。「大変なこともあるけれど、俺から店を取ったら何もなくなっちゃうから。(開業から)50年までは頑張っかな」(国井貴宏)

お店データ

味の菜華・石川町

【住所】石川町双里字桜町8の5

【電話】0247・26・3535

【営業時間】午前11時~午後2時、午後5時~同8時

【定休日】水曜日

【主なメニュー】
▽五目ラーメン=800円
▽マーボーメン=800円
▽五目焼きそば=910円
▽かつ丼(もち豚ロース)=970円
▽特製いしかわ牛丼=1100円
▽チャイナセット(生野菜、 半チャーハン、ドリンク)=300円
▽煮込みとんかつ定食=1200円
▽ホイコーロー定食=1200円
▽肉野菜炒め定食=980円
▽マーボー豆腐定食=950円

【店主メモ】和久さんは仕事を終えてからの夜の筋力トレーニングを日課にしている。夜にできなければ翌朝に行う。「元気に仕事を続けられるように。それに体を若く保っていたいじゃない」と笑う。

人気メニューの五目焼きそば人気メニューの五目焼きそば

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 NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜に連携企画

 まち中華物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。