【まち中華物語】丸見食堂・喜多方市 常連の声で本格派に

 
チャーハンを調理する店主の川見さん。仕上げに喜多方ラーメンスープで風味を出す自慢の味だ(石井裕貴撮影)

 30軒以上のラーメン店がのれんを出す全国屈指のラーメンの街にあって、多彩な中華料理を提供する珍しい店だ。「ラーメンばかりじゃなくて、喜多方でもうまい中華料理も食べてみたいね」。本格的に中華料理を提供し始めたきっかけは、常連客の一言だった。

 地域に根付いた大衆食堂として、ラーメンやチャーハンなどの中華メニューは元々あったが、看板料理にはほど遠い存在だった。常連客の言葉が起爆剤となり、中華料理を中心に据えた今の形になったのは10年ほど前からだ。

 「喜多方では昔、中華に力を入れる店が確かにあったけど、最近はうち以外ではあまり聞かないね。喜多方ラーメンの認知度が高まり、食堂もラーメンに力を入れる店が増えたからかな」。店主の川見晃さん(66)は、喜多方で希少な存在となった理由をこう推測する。

 20年の月日かけ

 中華料理に力を入れようと決めてからは、川見さんが休日に県内にある老舗の中華料理店で修業。基礎を学びながら腕を磨き、20年ほどの月日をかけて現在の形をつくっていった。またJR喜多方駅周辺にある道路の整備に伴い、店を現在の場所に移転した10年前には、中華の職人豊永祐朗さん(43)を採用し、中華の色をさらに濃くした。

 最初は戸惑いもあったが、今では客から「うまい中華料理の店」として認められ、開店時の厨房(ちゅうぼう)は忙しい時間帯が続く。一番人気はチャーハンだ。仕上げの段階で喜多方ラーメンのスープを鍋に加え、風味をきかせた味わい深い逸品で自然と食が進んでしまう。

 麺が見えなくなるほど麻婆(マーボー)豆腐がたっぷりかかった麻婆麺や、餃子(ギョーザ)もおすすめだ。これらは川見さんが全国各地の名店の味を参考に、改良を重ねてきた自慢の味だ。「地元産のコシヒカリや豚肉を材料に使っている。慣れ親しんだ地元の良さが詰まった料理だから、愛してもらえるのかな」と川見さんはほほ笑む。

 母の助言を守る

 店の歴史は古い。創業は戦前の1930(昭和5)年だ。喜多方駅から店が近かったことから、公演で訪れた俳優の杉村春子さんや高橋悦史さんらが訪れたこともある。祖母が開店し、2代目の母、そして3代目の川見さんへと受け継がれてきた。

 店を切り盛りする上で川見さんが大事にしているのは、2代目の亡き母節子さんからもらったアドバイスだ。「『料理は技術だけではない。作っている人が笑顔で楽しいと思っていないと、おいしい味にはならない』という言葉は胸に刻んでいる」

 そのモットーは店内の雰囲気にも表れている。週5回ほど店を訪れるという常連客の武石文敏さん(72)は「川見さんが丁寧に接客してくれたり、せかされることなくゆっくり食事を楽しめたり、何と言っても店の雰囲気がいい」と話す。

 客でにぎわう店内を見渡しながら川見さんは決意を語る。「どんなに苦しい時でも常連客が足を運んでくれた。本当にありがたい。これからもお客さんに料理を通して感謝の気持ちを伝えていきたい」(斎藤優樹)

お店データ

丸見食堂の地図

【住所】喜多方市字町田8257の5

【電話】0241・22・0506

【営業時間】
午前10時~午後7時(宴会、無尽は同10時)

【定休日】火曜日

【主なメニュー】
▽チャーハン=750円
▽五目チャーハン=1000円
▽餃子(5個)=550円
▽麻婆麺=800円
▽担々麺=950円
▽春巻き(3本)=600円
▽海老(えび)チリソース=1150円
▽酢豚=750円
▽回鍋肉(ホイコーロー)=750円
▽ねぎラーメン=900円
▽チャーシューラーメン=1050円

 【店主メモ】毎晩、自宅で飼っている犬や猫と散歩するのが癒やしだ。「なじみの常連客と会話するのも楽しみ」と笑顔を見せる。

麻婆麺とチャーハン人気メニューの麻婆麺とチャーハン。麻婆麺は麺が見えないほどたっぷりかかった麻婆豆腐が特徴だ

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 NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜に連携企画

 まち中華物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。