【まち中華物語】泉慶・いわき市 地域に愛される四川

 
「いわき市の風土と人間味が気に入って」と話す店主の和田さん(吉田義広撮影)

 縁もゆかりもなかった地に根を下ろし、約40年が過ぎた。「海も山もあり、東北なのに雪がほとんど降らない風土と人間味が気に入って」―。店主の和田聡さん(66)が独立し、いわき市に構えた店だ。今では昼時を中心に、多くのサラリーマンや家族連れが足を運ぶ「大衆中華」の店になった。

 和田さんは新潟市出身。いわき市との縁ができたのは、市内にあったデパート「大黒屋」のレストラン部門「四川料理芙蓉(フーロン)」で、料理長代行として勤めることになってからだ。

 転機が訪れたのは28歳の時だった。高校を卒業して辻調理師専門学校(大阪府)に入学して料理を学ぶと、卒業後は東京都内の「四川飯店」に就職。約6年にわたり修業する中で、いわき市の店に誘われた。

 たまたま四川飯店に来店していた大黒屋の関係者からの誘いだった。最初はもちろん戸惑いもあったが、「四川料理だけで勝負できるなら」と、いわき市での仕事を決意、今につながることになった。

 喜び泉のように

 芙蓉では5年勤めると、後進が育ったことで、道を譲ろうとの思いが芽生え、独立を決意した。元々は本格的な四川料理を目指していたが、幅広い世代が受け入れる地域密着の店の大切さを痛感。「うちは『中華専門のファミリーレストラン』を目指しているからね」と話すように、独立後に「大衆中華」へとかじを切った。

 同業者の力を借り、現在の場所とは違ういわき市泉町に店を構えた。店名の「泉慶(せんけい)」には、泉町にあったことから「慶(よろこ)び」が泉のように湧き上がってほしいとの思いを込めてある。

 開店当初は、立地が住宅地だったため出前も多く、年中無休で営業していたため苦労も多かった。ただ、頑張りは実を結び、徐々に地元の人に浸透してお客も増え、約4年にわたり営業。その後、現在の場所に移転した。

 8割以上が常連

 今では「お客さんの8割以上が常連」という店に成長した。120以上ものメニューをそろえる。2年に1度の頻度でメニュー開発に取り組み、仕入れでは鮮度にこだわりながら、体に優しく、老若男女に楽しんでもらえるような食材選びを意識している。

 一押しは、カニなどの魚介類をふんだんに使った「シーフード焼きそば」と「ごまだれ水餃子(ギョーザ)」だ。和田さんが「ほかの店ではあまり見たことがない」と自信をのぞかせる逸品だ。また、冬季メニューの「生ガキの辛子炒め」も自信作の一つだ。

 和田さんが「四川飯店」で修業中、ホールスタッフとして働いていた千葉県出身の妻真理さん(67)は現在、経理部門を担当し、裏方として店を支えている。店に出ることはないというが「妻のおかげで店に集中できている」と話す。

 食堂を営む母親の姿を見て育ったことで幼少期に食への興味を抱いた和田さん。「地域の人たちに支えられてここまでやってこられた」と感謝しながら、これからも地元のために中華料理を調理し続ける。(吉村響)

お店データ

泉慶の地図

【住所】いわき市東田町2の7の4

【電話】0246・62・1331

【営業時間】
午前11時~午後2時30分
午後5時~同9時
(ラストオーダー午後8時30分)

【定休日】火曜日
(火曜日が祝日の場合は水曜日)

【主なメニュー】
▽シーフード焼きそば=990円
▽シーフードそば=990円
▽酸味入り辛子そば=913円
▽エビスタミナラーメン=968円
▽フカヒレラーメン=3190円
▽ごまだれ水餃子(6個)=660円
▽大エビのチリソース=1485円(小皿)
▽牛肉甘みそ炒めパン包み=1155円(小皿)
▽クラゲとあわびの和(あ)え物=1155円(小皿)
▽牛もつ煮込みセット=1518円
▽角煮セット=1628円
▽エビと玉子辛し炒めセット=1628円

【店主メモ】趣味は20年以上続けるヘラブナ釣り。地元の愛好会に所属している。時間があれば本県や茨城県のダムや池に足を運び、釣りで気分転換している。

焼きそばと水餃子和田さんが推す「シーフード焼きそば」(左)と「ごまだれ水餃子」

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 NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜に連携企画

 まち中華物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。