【まち中華物語】中華のんき・いわき市 客への愛もデカ盛り

 
店主の水竹さんが完成させた「のっけ丼ミニスペシャル」。「ミニのっけ丼」を完食した人のみが注文できる一品だ(吉田義広撮影)

 ボリューム満点の「デカ盛り」メニューを目当てに、全国から大食い自慢が訪れる。「60歳を一つの区切りに、お世話になった分をお客さんに返そうと考え、大盛りのメニューを増やしたんだ」。店主の水竹康雄さん(77)は来店客の胃袋を満たすため料理を作り続けている。

 料理人を志したのは高校卒業後だ。磐城高を卒業して家業の瓦作りに励み、夜はいわき市内の中華料理店でアルバイトとして働いていた。まかない料理作りや配達なども担い、「忙しかったが充実していた」。ある時、水竹さんの仕事ぶりを見た店の料理人から、「ひょっとしたら、この仕事に向いてるかもしれないよ」と声をかけられた。この言葉が背中を押した。

 20歳の時、一念発起して料理修業に出た。友人の紹介で千葉県内の中華料理店で見習いとして働いた。中華料理店のほか、系列の和食店などの手伝いに駆り出されることもあり、「中華料理を勉強したいのに刺し身を切ったり、天ぷらを揚げていた」と笑うが、「今思えば、いろいろな経験を積めて幸せだった」と懐かしむ。

 学生の声に応え

 料理修業は3年続いた。その後、東京都江戸川区の中華料理店「みつはし」で約10年にわたり、料理人として腕を振るった。しかし、東京での生活は目まぐるしく「なじめなかった」と水竹さん。「のんびりとしたいわきの雰囲気が好きだった」。1979年5月、地元に戻り、現在の場所に店を構えた。「のんびりやっていこう」と思い、店名を「のんき」に決めた。

 開店後は本格的な中華料理をメインとしながらも、ハンバーグやとんかつなど、要望に応えて多彩なメニューを用意していった。開店から10年ほど過ぎた90年代前半から、店の近くにある平工高や東日本国際大から「食べ盛り」の学生が多く訪れるようになった。「若いお客さんが増えて自然と料理のボリュームが増えていった」

 ある時、大学の柔道部員6、7人が来店した。体を大きくするために、ご飯を何杯もおかわりしていた。「5回もおかわりする学生がいて、『何回もおかわりするのが面倒だ』と言われたんだ」。さらに「おかずをなんでものっけて」とも頼まれた。この声がデカ盛りメニュー「のっけ丼」の誕生につながった。

 止まらない進化

 「のっけ丼」は2005年、水竹さんが還暦を機に、来店客への恩返しの意味を込めて正式なメニューとなった。エビチリをはじめ、肉団子やホタテのバター焼きなどがのっている。最初は単一メニューだったが、完食する猛者が現れるたびに改良と増量を重ね、種類を増やしていった。「食べられちゃうと、つまんないから新しいバージョンを作ったんだよね」と笑う。

 現在は、量が少ない順に「ミニのっけ丼」「のっけ丼ミニスペシャル」「のっけ丼スペシャル」の3種類を用意。「ミニ」でもご飯5合、おかず7品のボリュームで1100円。「お金じゃない。お客さんとの触れ合いだ」と水竹さん。これからも「のっけ丼」をバージョンアップさせていくという。「まだまだこれから」。デカ盛りの進化は止まらない。(渡部俊也)

お店データ

中華のんきの地図

【住所】いわき市平作町3の1の12

【電話】0246・21・2663

【営業時間】
午前11時~午後3時
午後5時~同9時
(ラストオーダー営業終了30分前)

【定休日】毎週水曜日

【主なメニュー】
▽ラーメン=550円
▽かつ丼=830円
▽中華丼=770円
▽スタミナチャーハン焼き肉=940円
▽ラーメン定食=770円
▽酢豚定食=1100円
▽ブランチ(ライス、スープ、焼き肉、チキンカツなど)=770円
▽ミニのっけ丼=1100円(残した場合は1410円)
▽のっけ丼ミニスペシャル=1320円(ミニのっけ丼を完食した場合のみ注文可能)
▽のっけ丼スペシャル=時価(のっけ丼ミニスペシャルを完食した場合のみ注文可能)

【店主メモ】趣味は東京で働いていた頃に始めたヘラブナ釣り。趣味が高じて全国大会に出場した経験もある。店が忙しく、ここ3年ほどは遠ざかっていたが、近々再開する予定だ。

メニュー作りに取り組む店主中華メニューを中心に客のニーズに応えるメニュー作りに取り組む店主の水竹さん

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 NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜に連携企画

 まち中華物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。