【まち中華物語】中華のおみせ栁明・田村市 心満たすあっさり味

 
オーナーの政明さん(左)とかおりさんが切り盛りする店には夫婦の夢が詰まっている(吉田義広撮影)

 田村市の歴史と共に歩んできた。開店は2005(平成17)年。ちょうど5町村が合併して同市が誕生した年だ。オーナーの柳沼政明さん(46)と妻かおりさん(43)が切り盛りする店には、「古里に店を構えたい」との思いを実現させた2人の夢が詰まっている。

 食材生かす調理

 店は市役所や船引高などが並ぶ中心市街地の一角。一見すると洋食店のような店構えだが、そこにはオーナーの思いがある。「意識して『中華っぽさ』を出さないような造りにした」と政明さん。目指す「胃もたれしない、あっさりした中華」をイメージしてもらうため、店構えにこだわった。

 中華でありながら油分を極力控えるなど、新たな可能性を探るメニューが多い。地元産食材の良さを生かそうと「調味料が主張し過ぎず、脇役になる」料理を目指し続けているからだ。例えば、看板メニューの「エゴマ担々麺」には名産エゴマを使い、クリーミーなうまみを味わえる一品とした。

 ただ開店当初は「今まで味わったことがなく、おいしい」という評価と、「中華っぽくなくて物足りない」との声が半々。「万人受けは難しいので、味を認めてくれる人の期待に応えたい」と精進しているうちに、あっさり中華を求めて、帰省の際に立ち寄る首都圏などからのリピーターが増えていった。

 政明さんが料理人を志したきっかけは、幼い頃に古里で見た行商人の姿だ。古里の旧船引町では軽トラックで焼き芋やスイカなどを売りに来る「明るいおじちゃん」がいた。その姿を見ておいしい食べ物を提供する商売人に憧れた。「自分の将来を決めた。そこからは一途だった」と振り返る。

 高校卒業後、郡山市の日本調理技術専門学校に通い、和洋中と製菓など料理全般を学んだ。その後、アルバイトもしていた同市のホテルに就職し、宴会や婚礼も任される副料理長にもなった。後輩に指示を出す立場になったが、古里での開業の夢は消えることはなかった。

 独立を決意したのは28歳の時だ。かおりさんは家事や育児で忙しい時期だったが「夫の夢だから」と背中を押してくれ、スタッフ数人と共に店の歴史が始まった。

 明るい妻の支え

 政明さんにとってホールを担当してくれる明るい性格のかおりさんは大きな存在だ。かおりさんは夫の出身地で中華料理店を営むに当たり、見聞を広げるため、さまざまな地域活性化の活動に取り組む青年会議所(JC)に入会し、理事長も務めた。

 また、新型コロナウイルスの影響で時短営業を余儀なくされる中、かおりさんは空いた時間を料理の勉強に充て、ワインソムリエと調理師免許を取得。「不安に思っていてもしょうがない。プラスに考えないとね」とかおりさんは笑顔を見せる。

 現在はかおりさんの資格を生かし、夫婦で新たな挑戦も計画中で「今後はワインに合う中華を考えたい」と口をそろえる。今後も夫婦二人三脚で中華料理の可能性を広げていくつもりだ。(富山和明)

お店データ

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【住所】田村市船引町東部台3の65

【電話】0247・82・4685

【営業時間】午前11時15分~午後2時、午後5時30分~同9時

【定休日】毎週水曜日、毎月第3木曜日

【主なメニュー】
▽エゴマ担々麺=1150円
▽スーラータンメン=950円
▽五目焼きそば=950円
▽えびあんかけご飯=900円
▽蟹肉(かににく)入りレタスチャーハン=1100円
▽青菜と卵のスープ=700円
▽焼き餃子(ギョーザ)(5個)=500円
▽春巻き(2本)=480円
▽フルーツ入り杏仁(あんにん)豆腐=450円
▽ゴマプリン=350円

【店主メモ】郡山市のホテルで勤務していた際、最も学んだことは「人間関係」や「上下関係」という。「調理技術が必要なのはもちろんだけど、料理店を営むには人付き合いも大切」と話す。

221211machichuka3.jpg 看板メニューの「エゴマ担々麺」

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 NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜に連携企画

 まち中華物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。