【まち中華物語】南京飯店花春店・会津若松市 明かり絶えぬ繁盛店

 
皮から手作りしている自慢のオリジナル餃子を調理する店主の中島さん(石井裕貴撮影)

 年中無休を続けて30年。お店の明かりは絶えず輝く。「お客さんがいつでも来られるようにね。いつ来てもいつも開いているということが大切なんだよ」。会津若松市の「南京飯店 花春店」の中島義男さん(77)の満ち足りた表情には、経営者として、そしてまた料理人として店を守ってきた矜持(きょうじ)が見える。

 開業は1992(平成4)年。父の営む中華料理店からのれん分けして独立した。高校卒業後、一時期東京で働いていたが、長男ということもあり29歳の時に帰郷、父の店で料理人の道を歩み始めた。「不安はあった。やったことなかったから」。東京では飲食と全く異なる仕事をしていた。不安を取り除いていくように、食べ歩きして料理を研究した。

 こだわった立地

 独立する際にこだわったのは店の立地だ。良い場所を探していると、元々料理店だった一つの空き物件を見つけた。近隣の城東町に文化施設の會津風雅堂が建設されることを知り、また県立会津総合病院(現在は廃止)の近くでもあった。すぐさま店舗を借り、内装や外装を整えた。「屋号を前面に出して、目立つように」と店の正面に掲げた「南京」の大きな文字看板は、ひときわ存在感を放つ。

 立地の狙いは見事に当たった。父の時代のお店から通ってくれる常連客のほか、鶴ケ城公園、県立博物館、會津風雅堂などの会津を代表する施設に近いという強みは誘客につながった。「スタートから忙しかった」と振り返る中島さん。一国一城の主となっても不安なく仕事に没頭、「南京」の大文字看板は今では観光地と融合した風景の一つとなった。

 営業時間は毎日午前11時から午後11時まで。ランチ、夕方、夜にある1日3回のお客の波に十分対応できるように、従業員は交代制で、余裕を持って働く。常連客からよく働くねと感心される中島さんだが、「私もしっかり休んでるよ」とにっこり。勉強を兼ねてよく視聴する、芸能人が街なかの中華料理店を巡るテレビ番組で、70代、80代の店主が夫婦で切り盛りしている様子に刺激を受けている。感心すると同時に「まだまだ若い人たちには負けられない」という気持ちが湧き上がる。

 昨年夏、駐車場を拡大すると客足もさらに増えた。エビやイカ、ウズラの卵などをしょうゆベースのあんかけでまとめた「南京メン」、京みそと白みそでアレンジした「ホンコンラーメン」など人気メニューが並ぶ中、皮から手作りしている自慢のオリジナル餃子(ギョーザ)は県外からそれ目当てに通うお客がいるほどだ。

 心に染みる言葉

 親子3代で通う常連客、観光客を送り届けたバスの運転手やバスガイド、サラリーマン―。客層を見ると、観光地の特性も色濃く、そして地域に愛される店であることが分かる。「お客さんの『おいしかった』の一言が心に染みるんだよ」と中島さん。これから会津は雪化粧によって厳しい冬の顔となる。心も体も温めたくなったら目指す先は大文字看板だ。店のドアは今日も開いている。(阿部裕樹)

お店データ

南京飯店花春店の地図

【住所】会津若松市宝町3の15

【電話】0242・28・7000

【営業時間】午前11時~午後11時

【定休日】年中無休

【主なメニュー】
▽南京メン=850円
▽ホンコンラーメン=930円
▽みそ野菜タンメン=800円
▽マーボメン=930円
▽五目やきそば=880円
▽ホイコーロ炒め(単品)=1100円
▽ニラレバー炒め(単品)=1000円
▽ピリッと辛いモツ炒め(単品)=800円
▽特選餃子=400円
▽セットメニュー(麺類と半チャーハンなど)=800~1000円

【店主メモ】趣味は洋ランの栽培。植物が好きなことと、華やかさにひかれて何十年も続けているといい、店内にも飾ってある。洋ランは寒さに弱いため、冬は閉店後も暖房をつけておいて室温を保っている。

ホンコンラーメン(手前)京みそと白みそを使ったホンコンラーメン(手前)は深いコクが人気だ

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 NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜に連携企画

 まち中華物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。