【まち中華物語】中華食堂ちんめん・伊達市 味には矜持、気軽な店

初代「ちんめん」を創業した父の姿を見て育ち、27歳の時に独立して構えた店だ。「毎日来ても食べ飽きない気軽なまち中華を目指す」。オープンから25年を迎えた今も、店主の金子俊哉さん(52)の心意気は変わらない。
料理人の道には高校卒業後、自ら飛び込んだ。同じく伊達市にあり、JR伊達駅寄りにある初代「ちんめん」を経営する勲さん(83)を追うように選んだ職業だ。福島市にあるホテルで本格的な中華料理を学び、25歳の時に父の店で2年修業、現在の店を構えた。
金子さんの一日は、ラーメンのスープ作りから始まる。店のほぼ全ての料理のベースとなる透き通ったスープは、父から受け継いだこだわりの味だ。
父は家業である和菓子屋の傍ら、中華料理店を始めた探究心旺盛な人で、受け継ぐスープは鶏、豚ガラと香味野菜を加え、毎朝7時から4~5時間かけ、ずんどう鍋いっぱいに仕込む。
値段にこだわり
ラーメンスープのほかに、ギョーザ、シューマイ、春巻きも全て手作りしている。「妥協せず当たり前の物を当たり前に作る」。金子さんが大事にしている矜持(きょうじ)だ。またメニューは基本、1000円以内という値段にこだわっており、金子さんは「安価で提供し、家族連れでも本格中華を楽しんでほしい」と話す。
新メニューにも貪欲に取り組む。開店当初、まだ珍しかった「汁なしタンタンメン」などのまぜそば類も他店より早く取り入れた。「なぜラーメンなのにスープが入っていないのか」と驚かれたこともあったという。
最近はお客の健康志向を見据えて開発した「トマトスープメン」が好評で、中でもトマトの酸味と辛さがクセになるという「サンラートマトメン」が人気を集めている。
常連に支えられ
昼はランチメニューを求めるサラリーマン、夜は常連客や家族連れでにぎわう店は東日本大震災をはじめ、東日本台風、本県沖地震の影響を受けてきた。
近年は新型コロナウイルス禍で客足が3割減少。48席あった客席を半分以下の23席に減らし、妻かおりさん(57)との二人三脚で何とか乗り越えようとしていた昨年3月、本県沖を震源とする地震が起きた。
大きな揺れで国道4号からの最寄りルートをつなぐ伊達橋が損壊、通行止めになった。人の流れは一変し、店の前の交通量が激減。客足は一時、コロナ禍前の半分まで落ち込んだという。
伊達橋は今年10月にも仮橋が完成する予定で、現在も人の流れは大きく変わっていない。しかし、常連客が徐々に戻り、客足は7割程度までに回復した。
理由は、以前は買い物途中などに立ち寄っていた人たちが、迂回(うかい)してまで店に足を運んでくれるようになったからだ。金子さんは「困難の連続だったが、その都度、常連さんの支えがあり、ここまで来ることができた」と感謝する。
節目のオープン30年に向け、金子さんは地元密着の店として決意を新たにしている。「これからも誠意を持って、おいしい中華を提供していく。この場所でできる限り、この味と値段を守り続けたい」(飯野大輔)
【住所】伊達市伏黒字上宮本6の3
【電話】024・583・4100
【営業時間】午前11時~午後2時30分(ラストオーダー午後2時)午後5時30分~同8時30分(ラストオーダー午後8時)
【定休日】月曜日。日曜日、祝日、当面の木曜日は昼のみ営業。今月15日は臨時休業
【主なメニュー】
▽ニュウロウメン(牛肉麺)=968円
▽マーラータンメン=880円
▽サンラートマトメン=990円
▽汁なしタンタンメン=990円
▽マーラーニュウロウバンメン=1078円
▽鶏唐揚げ薬味ソース=935円
▽酢豚=880円
▽揚げエビのマヨネーズソース和(あ)え=968円
【店主メモ】趣味はツーリング。愛車の排気量1200ccオートバイで旅に出る。気になる飲食店は中華に限らず、一人で県内外に出かけ、味を探究している。「バイクは何よりの気晴らし」と笑う。
酢豚やホイコーローなど定番メニューに加え、サンラートマトメン(右)など新メニューにも積極的に取り組んでいる
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NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜に連携企画
まち中華物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。