仕事を効率よく柔軟に、半農・半ITで働く 山形・庄内町

 
いで葉工望のハウスでベビーリーフを収穫する遠田克さん=2021年3月、山形県庄内町

 「半農・半IT」という新たな働き方を模索する企業がある。山形県庄内町でベビーリーフの生産販売に取り組む「いで葉工望」(成田浩輝社長)は、ワークウェア社会保険労務士法人(愛知県、立岩優征代表)と連携し、農業とシステム開発のダブルワークを昨年導入した。それぞれの繁忙期に応じて柔軟に勤務時間を変えて農業とITの仕事を両立させている。

 いで葉工望は2018年に設立し、ハウス36棟で季節ごとに約20種のベビーリーフを生産販売している。効率的な収穫や廃棄量削減を目指して県立産業技術短期大学校庄内校(酒田市)と連携。品種別の収穫量や規格外品の割合などをデータ管理するシステムの構築を進めてきた。

 ワークウェア社は企業の人事や労務管理をクラウド上で行えるシステムを開発・運用している。新型コロナウイルス禍以前から非対面方式を採用し、デジタル化により社会・ビジネスを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に先駆的に取り組んできた。日頃から本社と東京事務所などをリモートでつなぎ業務に当たっている。

 2社が連携、互いに刺激

 母親が山形県出身という立岩代表が、県内で新たなソフトウエア開発拠点の整備を考えていたところ、親戚でもある成田社長と連携することになり、半農・半ITという働き方の導入を決めた。両社から雇用される形で昨年3月から、従業員の遠田克さん(24)がいで葉工望を拠点に働き始めた。

 一日を時間で区切り、いで葉工望とワークウェア社の両方の業務に当たる。夏場なら比較的涼しい午前中と夕方にベビーリーフのハウスで作業し、日中は室内でシステム開発の業務をするなど、柔軟な働き方が可能だ。働き始めて間もなく1年。「システムエンジニアとして働いた経験はあるが、農業は初めて」という遠田さんも、いで葉工望では唯一の20代として作物の水やりや収穫に精を出し、ワークウェア社では人事評価アプリを開発した。

 立岩代表は「一つのことに集中するより、異なる分野で働くことで得られる刺激がある。どんな場所でも働くことができるという見本になっているのではないか」と語った。成田社長は「一般的なダブルワークとして想定されるのは個人事業主。両者から雇用される形は珍しいと思う。これからもやりやすい方法を模索していきたい」と話していた。
(山形新聞社酒田支社・井上萌々子)。

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 ※ワークウェア社の本社や東京事務所とリモートでつなぎ打ち合わせする遠田さん(左)

 いで葉工望・ワークウェア社会保険労務士法人でダブルワーク 遠田克さんに聞く

 ※半農・半ITの働き方に取り組む遠田さん

 ―半農・半ITという働き方での雇用について打診を受けた時の感想は。
 「山形市でシステムエンジニアとしての勤務を経て庄内町にUターンし、縁があっていで葉工望に就職した。その時は半農・半ITという働き方を考えてはいなかったが、たまたまワークウェア社から人材を探しているという話を聞き、力になれたらという思いで受けた。最初は、両方に従事することで仕事量が倍になるのではないか、また、半々ずつ業務をすることで両方ともおろそかにならないかという不安があった。今は両社の代表に配慮してもらいながら柔軟に働くことができている」

 ―具体的にどんなスケジュールで働いているのか。
 「例えば夏は午前5時半から午前10時まで、午後4時半から午後6時まではいで葉で週4日ほど勤務し、正午から午後4時まではワークウェアの業務に週2日ほど当たっていた。冬は午前9時から正午までがいで葉、午後1時から午後5時まではワークウェアの仕事をしている」

 ―季節ごとに異なるのはなぜか。
 「ベビーリーフは、種まきをして収穫できるようになるまでの期間が季節によって異なる。夏なら約2週間、冬なら約2カ月とかなりの差があるので、どうしても夏はいで葉での業務が多くなる。また、夏場の日中にハウスで水やりをするのは、人間にとってもベビーリーフにとっても温度が高過ぎて良くない。早朝と夕方の時間にハウスで仕事をし、日中は室内でワークウェアの業務をしている」

 ―この働き方を始めて間もなく1年。どのようなところに利点を感じるか。
 「農業にもシステム開発にも携わることで、農業分野にITを活用できないかという視点を持つようになった。以前、県立産業技術短期大学校庄内校といで葉が連携して構築した生産データ管理システムは主にベビーリーフの収穫量などを蓄積していくのが主だった。今後はこれを発展させ、収量予測のシステムを作りたい。夏場の廃棄量削減や、冬の収量不足に対応できるようにしたい」

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