◇田中須美子さん(94)《3》 毎朝ラブレターを書く

 

◆クラロン会長

 元気の源が社員なら、一番くつろげる時間は夫と語り合う朝です。

 語り合うと言っても、仏壇の遺影に手を合わせて、私がもっぱら話し掛けるのですが、写真の夫はいろいろな表情をして答えてくれているように思います。

 遺影の顔が笑顔に見えたら「今日はいいことがありそう」と心が弾み、口を閉じて厳しい表情をした時には「気を引き締めよう」と慎重になります。笑い掛けてくることの方が多いですが、私を導いてくれていると感じます。

 こんな霊感じみたことは私だけに起きるのかと思っていたら、そうでもありません。線香を上げに来てくれた夫の知人も、遺影を見て「なんか唇が動くんだよな」とか「笑ってくれた」とか言います。夫の優しさが亡くなっても、遺影を通して表れているようです。

 夫と話す時には、お茶を飲みながら梅干しを2個食べます。私は梅干しが嫌いですが、夫が生前に好んでよく食べていました。だから夫が食べたいだろうと思って、夫の分まで食べます。20~30分程度ですが、十分な休息となり、仕事に向かう切り替えになります。

 夫も生前、朝の時間を大切にしていました。
 「仕事などの建設的な話は朝に言いなさい」と常日ごろ言っていました。夜に難しい話をしても対応しようがないというのが理由でした。だから「夜は楽しい話をしよう」という決まり事になっていました。でも夫がいない今、楽しい話をするのは朝になりました。

 手紙を書くのも朝がいいです。
 内容は秘密ですが、夫が2002(平成14)年に亡くなってから毎朝、天国の夫宛てにラブレターを書いています。あまり悲しいことを書かないことにしていて、書くことがない時には、ただ「会いたい」とだけ書きます。そんな時には悲しみが込み上げてきて、つい泣いてしまいます。

 たわいないことではありますが、夫とゆっくりと過ごすこの時間が私にとっては、とても大事なひとときになるのです。