ノウハウはヤミ金融 犯人同士の関係は薄く

 
ノウハウはヤミ金融 犯人同士の関係は薄く

県警は複雑化した組織犯罪への警戒を強めている(写真は県警本部が入る県庁本庁舎)

 「指示は非通知の電話で受けた。『中国』からの電話で動く」。なりすまし詐欺事件で、現金を受け取る「受け子」の調達役を担った「リクルーター」として、県警に2013(平成25)年、逮捕された小室和男=当時(31)、仮名=らは、捜査関係者の取り調べにこう供述した。「中国?」。捜査関係者は、詳しい話を聞こうとしたが、小室の説明は最後まで要領を得なかった。犯行グループの末端にいる受け子やリクルーターから組織の全容をうかがい知るのは難しいという。

 ■供述ぼんやり

 県警は、中通りで発生したなりすまし詐欺事件を足掛かりに、千葉県の80代女性から400万円をだまし取った疑いで九州在住の小室ら3人を逮捕。受け子の2人は既に逮捕していた。

 小室らは九州で2人を受け子に誘い込み、首都圏に派遣していた。県警の捜査員らは「ついに受け子の上を押さえた」と色めき立ったが、小室らの供述は、ぼんやりとしていた。

 県警によると、被害者の女性は警察官や「銀行庁職員」を名乗る男らに「定期預金だけでも解約した方が安全。お金を預かる」などと持ち掛けられ、現金をだまし取られた。

 しかし、受け子を派遣したはずの小室らは、女性がどのような口実で現金をだまし取られたのかよく分かっていなかった。だますのは電話をかける「かけ子」の役割。リクルーターの小室らには高齢者をだます「シナリオ」は知らされていなかった。

 「つまりはヤミ金融を応用した形」。暴力団犯罪に精通する県警の捜査関係者は、犯行グループの構造をこう解説する。ヤミ金融は暴力団を頂点にして多重債務者のリストを基に法定利息を超える高金利で現金を貸し付けた組織犯罪で、十数年前に大きな被害を生んだ。

 名簿を基に組織的に現金を集める仕組みは、なりすまし詐欺と酷似しているが、警察にとっては、上納金を集める暴力団が中心にあることで犯行グループ中枢からの捜査が可能な犯罪でもあった。

 ■捜査及ばぬ仕組み

 「なりすまし詐欺は最初、ヤミ金融経験者らが入り、そのノウハウを注ぎ込んだ。ヤミ金融でネックとなった暴力団中心の分かりやすい組織を避け、役割ごとの関係を薄くすることで捜査が中枢に及ばない仕組みを徐々につくり上げた」

 一方、捜査2課幹部は「今も暴力団やヤミ金融経験者の関与は少なくない」とした上で、全国的な摘発状況から、主要な担い手は暴走族OBなどが中心の不良グループとみる。