静脈産業AIで改革 廃棄物選別ロボット「ウラノス」、新潟・上越

 
AI搭載の廃棄物選別ロボット「ウラノス」と、開発したウエノテックスの上野光陽社長=9月8日、新潟県上越市柿崎区

 新潟県上越市柿崎区に本社を置く産業機器メーカーの「ウエノテックス」はAI(人工知能)搭載の廃棄物選別ロボット「URANOS(ウラノス)」を開発した。

 製品を生み出す「動脈産業」に対し、廃棄物を処理する「静脈産業」は機械による自動化が進まず、現場の労働力不足が大きな課題だ。最新技術の力で業界の未来を変えようとしている。

◆人手不足補い危険減

 1937年に「上野鐵工所」として創業し、産業用クレーンや省力化設備製造を手掛けてきた。廃棄物の「破砕機」にも参入し、環境関連機器を主力とするが、近年はAIやIoT(モノのインターネット)の活用に力を入れる。その代表的な存在が2019年に販売を始めたウラノスだ。

 コンベヤーを流れるペットボトルやビンなど廃棄物をカメラなどさまざまなセンサーで捉え、AIがラベルの有無や色などの状態を瞬時に判別する。機敏に動くロボットアームがピックアップし、最適な処理ラインに振り分ける。

 従来より大幅に少ない人員でラインを動かせ、作業事故の危険も格段に減らせる。今年3月には熊本市の業者に1号機を納入した。既に別の業者から2、3号の発注も受けている。

dtyjdtujsrthsrgsdg450.jpg

 上野光陽社長(48)が開発の構想を抱いたのは6年ほど前。きつい、汚い、危険、臭い、暗いの「5K」。そんなイメージももたれがちな廃棄物処理業者は、どこも人手確保に苦労していた。「社会に欠かせない『静脈産業』の現場を技術で変えたいと思った」と動機を語る。

 知見がなかったAI開発に特化したグループ会社「リタテクノロジー」(東京)を18年に設立。社名には、技術で他者に貢献するとの決意から「利他」の意味を込めた。

 廃棄物は規格が統一された部品などと違い、つぶれたり汚れたり状態は千差万別だ。AI選別では大きな障害となるが、ウラノスは大量のデータを基に自ら学びを繰り返し、共通点や特徴を見いだすディープラーニング(深層学習)という手法でこれをクリアした。

 AI開発を担ったリタ社チーフデータサイエンティストの名取則行さん(31)は「機械は疑うことを知らない。正しい認識のためには子どもに教材を与え、教えるように、人が間違いのないデータを準備することが何より大事だ」と語る。学習を深めることで初めて扱う廃棄物でもAIが自分で判断し、選別ができるようになる。

 今後は建築廃材など、より形状や素材がバラバラな廃棄物にも対応するのが目標だ。上野社長は「まだまだやるべきことは多い。お客さんが何に困り、どうすれば課題の解決につながるのか。現場の声を大切に、挑戦を繰り返したい」と力を込めた。(新潟日報社上越支社報道部・安達傑)

期待してます 同業者にも広めたい、石坂繁典さん

etyjhetutuegerfger21223.jpg ウラノスの最初のユーザーになったのが熊本市の廃棄物回収リサイクル会社「石坂グループ」だ。ペットボトルの選別ラインに導入した。同社環境事業部長の石坂繁典さん(35)は「4、5人の作業が1、2人でできるようになった」と省力化効果を語る。

 現場環境の改善に向け自動選別機の導入を考え始めていたころ、以前から付き合いがあった上野社長のウラノス開発構想を聞いた。海外製品にはメンテナンスや運用コストで不安があり、国産の機械で「静脈産業」の未来を変えたいという上野社長のチャレンジに賛同。現場視点の助言で開発を支えてきた。

 導入後、「差し込む光の加減など、ちょっとした条件で選別の精度が変わる。環境づくりが大事」と課題も見えたが、それ以上に「経験や勘に頼っていたことを補っていける」と大きな期待を寄せる。

 ゆくゆくは他のラインにも導入するつもりだ。「ウラノスにできることは多い。同業者などにも広めていきたい」と普及の夢も抱いている。

期待してます 業界変える熱感じた、大野宏さん

dwfqerqwrqwdq.jpg 2016年度から2年間、AIの土台づくりでウエノテックスと共同研究に取り組んだのは、新潟県工業技術総合研究所中越技術支援センター(長岡市)だ。「新たな看板製品を作り業界を変えていくという上野社長の熱意を感じた」。センター参事の大野宏さん(58)は振り返る。

 「共同研究は企業に成果をスムーズに戻せるかが課題だが、専門性を持つ人材をしっかり確保し、グループ会社への技術移転がうまくいった。短期間で製品化した執念もすごい」と称賛する。

 新型コロナウイルス禍を受け、新たな商機を見いだそうとAIを使った製品開発を模索する企業が増えている。大野さんはウエノテックスの事業展開について「ハードの高い技術にAIを上乗せし、付加価値の高い製品を生み出した好事例だ。AIは幅広く応用できる。多くの県内企業に続いてほしい」と話した。

fghtrhdvsdfaefawe.gif

◆このシリーズに関するご意見、ご感想、応援メッセージを募集します。

 はがきかファクス、メールに住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記し、福島民友新聞社編集局「スマート社会へ~地域を創る新しい力~」係までお送りください。

▽郵便番号960―8648 福島市柳町4の29
▽ファクス024・523・1657
▽メールhodo@minyu‐net.com

【東北・新潟8新聞社共同企画】
福島民友新聞社 東奥日報社 岩手日報社 秋田魁新報社 河北新報社 山形新聞社 福島民報社 新潟日報社