高橋洋平氏寄稿(3)イノベ構想の本質は人 自分たちが考え 動かす

 

 震災後の閉塞(へいそく)感があった日本において、イノベーションという新語は、定義が難しい一方で、革新性を感じる輝きを持つ言葉として浸透したように思われます。そして、現在浜通りを中心に、福島イノベーション・コースト構想(イノベ構想)が展開されています。

 浜通りには廃炉をはじめ、少子高齢化、産業の空洞化、風評・風化など困難な課題が多くあります。こうした切実で困難な課題があるからこそ、再生可能エネルギーやロボットなどのイノベーションが生まれる土壌があると言えます。エジソンが言うように「必要は発明の母」なのです。
 イノベ構想の教育プログラムに参加した高校生のアンケートに、こうありました。

 「福島県の問題は何か、必要なものは何かを考え、改善するためのアイディアを出していこう。福島の未来を担う一若者として、自分からイノベーションを起こすことができる人材になりたい」

 この高校生の爽やかな意志が象徴するように、イノベ構想の本質は「人」であると考えます。イノベ構想というと最新の施設や難解な研究をイメージする方が多いと思いますが、鍵を握るのは人材です。

 また、イノベ構想の目的は県民の幸福や豊かさであり、先端産業や国際教育研究拠点を、いかに県民の未来につなげるかが大事です。そして、国家プロジェクトであるものの、黒船としてではなく県民の構想として、若者も参加していけるような機会も必要です。つまり、「人間の人間による人間のためのイノベ構想」でなければならないと考えます。

 たかはし・ようへい 宮城県登米市出身。東北大教育学部卒。2005年に文部科学省に入省。教育改革推進室専門官、私学助成課長補佐などを経て16年から本県に出向し、教育総務課長を3年、企画調整課長を2年務めた。21年4月に同省に復帰し、情報教育・外国語教育課長補佐を務める。