【建物語】白河駅・白河市 100年変わらぬ玄関口

 
赤瓦の三角屋根と白壁が特徴の白河駅。今年、改築100周年を迎える洋風の木造駅舎は 「東北の玄関口」として親しまれている

 特徴的な赤瓦の三角形の屋根と白とグレーに塗り分けられた外壁から、レトロな洋館のような雰囲気が残る。白河市の「JR白河駅」は今年6月で改築100周年を迎える。「東北の玄関口」として日々、通勤、通学の会社員や高校生、観光客らを出迎えている。

 駅舎は1921(大正10)年に建てられた。ホームからは市のシンボル「小峰城」も望める。構内の壁には市内の観光スポットを紹介する看板が設置され、観光拠点としての役割も担う。駅舎の中に入ると、天井が高く、開放的な空間が広がる。光が差し込む色鮮やかなステンドグラスや、花々が咲く中庭が利用客の心を癒やす。東北地方の特徴的な駅を選んだ「東北の駅100選」にも入っている。

車のCMが話題に

 駅は最近、軽乗用車のCMの撮影地として注目を集めた。CMでは、夕方の駅で制服姿の女の子を迎えに来る1台の車といった何とも風情のある光景が描かれた。見た人の記憶にあるかもしれない趣のある駅舎として、舞台に選ばれたという。インターネットの会員制交流サイト(SNS)では「見覚えがある」などの投稿が寄せられ、ひそかに話題となっていた。

 また、駅構内ではコーヒーやデザート、カレーやパスタを味わえるカフェ「えきかふぇ SHIRAKAWA」が利用客らの憩いの場として愛されている。店の責任者の長倉智和さん(41)は「大正時代から使われている建物で、歴史と文化が詰まっている」と同駅の魅力を語る。

 カフェは、待合室を改修し、2009(平成21)年9月にオープン。地元の食品を使用した料理のほか、県南地方の原料を使ったジャムやドレッシング、名物の白河だるまを販売するなど、地元の魅力発信に一役買っている。店内は、大正時代に建設された壁や天井がそのまま残っていて、当時のモダンな雰囲気を楽しむことができる。

日食のため急ぐ

 実は、現在の駅舎は2代目。初代の駅舎は約100メートル余り、郡山側にあったという。白河駅はもともと、1887(明治20)年7月に、日本鉄道会社の駅として開業した。同年8月19日に「白河日食」とも呼ばれた皆既日食が観測されるとして、内務省と文部省は白河に観測地を設置。皆既日食を観測する機材や観衆を輸送するため鉄道敷設工事を急ピッチに進めた、という逸話が残る。

 その後、勾配とカーブの緩和を目的に路線変更などが行われた。これに伴い、新たな駅舎の建造が始まった。

 白河駅の開業100周年記念誌によると、現在の駅舎での営業が始まったのは1921(大正10)年6月。完成から100年という長い時間が経過した今も、変わらぬ姿を見せてくれる。

 「歴史があって、非常に落ち着く建物だった」。そうしみじみと振り返るのは元白河駅長の永野強さん(69)。2006(平成18)年から3年間、白河駅で駅長を務めた。07年には、開業120周年記念イベントも行われ、駅長としてその魅力を身近に感じてきた。

 「長年、街のシンボルとして、地域の皆さんに利用され、愛されている存在。それに応えようと良いサービスを心掛けました」と永野さん。街の移り変わりを見守ってきた「白河駅」。そこから感じる何とも言えない懐かしさや温かみは、100年分の市民の思いなのかもしれない。(伊藤大樹)

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 白河駅 白を基調とした木造平屋で、赤瓦の三角形の屋根が特徴的。一本のみの長いホームは、駅舎よりも高い位置にある。駅の待合室を改修し、オープンした「えきかふぇ SHIRAKAWA」では、カレーやパスタなどのランチのほか、タピオカドリンクなども楽しめる。営業時間は午前11時~午後5時。木曜日定休。問い合わせは同店(電話0248・23・5530)へ。

白河駅の地図

NHKラジオ第1「こでらんに5 next」で毎週木曜にコラボ企画

 建物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『こでらんに5 next』(休止の場合あり)のコーナー「ふくしま見聞録」で紹介される予定です。