【みんゆう特命係】分別の徹底重要 ごみ排出量全国ワースト2位

 
ごみ集積所を回り、回収作業を行う鈴木さん(左)。分別できていないごみ、袋からあふれたごみが散乱する集積所などが目立った=福島市

 環境省がまとめた2020年度の統計で、本県は県民1人当たりのごみ排出量が2年連続で全国ワースト2位となった。排出量は1033グラムで、各市町村にとって減量化は急務だ。その中でも福島市は排出量が比較的多く、長年の課題となっている。市民の意識の問題か、それとも回収の仕組みの問題なのか。現状と理由を探った。

 目立つ生ごみ

 「なぜ、福島市はごみが多いのか」。その答えを求め、同市出身の記者が5月中旬にごみの回収車に同行し、ごみの集積所の様子を調査した。市から生活系ごみの回収を委託されている市エコエリア協業組合の回収車と一緒に巡ると、現状が見えてきた。

 福島市の排出量は全国にある人口10万人以上の都市で、ワースト11位となる1107グラムだ。全国平均の901グラムよりまだまだ多いのが現状だ。要因の一つが家庭から出る生活系ごみの多さ。全体の7割を占め、特に生ごみの多さが目立っている。

 「ここはすごいですよ」。組合で統括課長を務める鈴木和義さん(44)に案内されたごみ集積所の扉を開けると、床が残飯の入った袋で埋め尽くされていた。食べ物の廃棄が日頃から多いという集積所で、においがきつい。

 「うわっ」。回収作業中の職員が思わず声を上げた。汁ものが入った袋を回収車のプレスにかけると、袋が破裂し、作業員に汁がかかりそうになった。食べ残しなどで廃棄される食べ物「食品ロス」を実感。排出量の多さにつながる状況だと考えさせられる。

 そして、排出量の多さに直結するもう一つの理由がごみの分別だろう。当日は可燃ごみ回収の日だったが、資源ごみのペットボトルが交じっている状況が数多く見られた。回収する作業員が置き場所を変え、分別する姿もあった。

 担当地区を約1時間30分かけて巡り、回収する鈴木さんは集積所について「福島市では指定の袋がないため、中身の見えない袋に何でも入れて捨てる人もいる」と話す。同行した記者が大学時代を過ごした静岡市では、市指定の有料袋を使わなければならなかった。ごみは指定袋に詰められ、散乱するごみも少ない印象だった。一方、福島市では指定袋がなく、段ボールや紙袋にごみが詰められていることも多いという。

 そのためか、ごみがまとまりきらず、袋からあふれ、集積所の床に散らかっている場所も見られた。そのような所では職員がほうきなどで集めて回収していた。

 震災後に急増

 環境問題に詳しい福島大経済経営学類の沼田大輔准教授(44)は「(福島市は)全国各地の自治体と比較すると、ごみ排出量の減少が追い付いておらず、大幅な改善は見られない」と現状を分析する。

 同行取材で感じたのは、ごみの出し方が排出量に直結するということだ。減量に向け、行政側の周知や取り組みも欠かすことができない。決まった出し方を徹底しないと回収業者の負担につながり、ごみ処理の費用もさらに増える。

 本県は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後に排出量が急増し、自然災害や新型コロナウイルスによる移動自粛などが重なり、ワースト1~3位と高止まりが続く。目をそらしがちな問題だが、もう一度考える時期が来ている。

 目立つ手つかず食品 生活系のごみ多い福島市

 福島市の家庭から出る生活系ごみの多さは、人口10万人以上の都市ではワースト6位の量だ。市による年1回のごみの抽出調査では、手つかずのまま捨てられた野菜や包装されたままの食品が目立っている。「食品ロス」や分別に対する取り組みが大きく影響しているようだ。

 優しさが甘えに

 「分別を重視し、ごみの量についての意識は薄いかもしれない」。市内に住む40代女性はこう話す。この女性は排出量の多さについて「可燃物の日に、プラスチックなどの資源ごみがまざっている状況をよく見る。まざっていても持っていってくれる『優しさ』が市民の甘えにつながっているのではないか」との考えで、市民の意識と市の回収方法を問題視する。

 市の担当者は「福島市は近所で野菜や果物を贈り合う文化に加え、震災以降は買いだめ傾向も重なり、消費できないまま廃棄されるものが多いのではないか」と排出量の原因を分析しており、市は「ごみ減量大作戦」と銘打ち、2019年度から各施策に取り組むが、大きな効果は生まれていないのが現状だ。

 日常から市の呼びかけに応じ、ごみの減量に取り組む70代女性は「ごみの減量方法について、詳しく知る市民が少ないのではないか」と指摘し、市による周知強化の必要性を挙げる。

 この女性は、市が推奨する生ごみを堆肥化する容器「コンポスト」を購入し、自宅で使用している。また、資源ごみの一つ「雑がみ」として排出できるトイレットペーパーやラップの芯は別にして集積所に出しているという。「多くの人がもっと(分別方法を)知れば、リサイクルできるごみの量が増えるのではないか」と提案した。

 一人一人の意識

 焼却や選別など、ごみ処理を担う「あぶくまクリーンセンター」には、1日平均で約200トンのごみが搬入される。このうち資源ごみは「手選別室」と呼ばれる作業場で選別されている。

 職員4人がベルトコンベヤーから運ばれてくる「再利用可能な資源物」と「可燃物」「汚れがひどく再利用できないもの」の3種類に手作業で分別している。

 分別がされていないと、当たり前だが作業の負担は増える。注射針やカミソリ、電池などが混入しているケースもあり、一筋縄ではいかない作業だ。

 所長の鈴木茂雄さん(56)は「一人一人がごみを正しく分別する意識を持てば、全体の排出量を減らすことにつながる。一人一人の意識の変化が大きな効果となる」と話し、市民の協力を求めている。(取材班)

 福島大・沼田大輔准教授「行政主体の取り組み強化を」

 福島大経済経営学類の沼田大輔准教授(44)=環境経済学=は福島市のごみ減量に向けて「市民の現状を理解し、行政が主体となって動く仕組みが必要だ」とさらなる取り組みの強化を促す。

 参考例として京都市を挙げる。20年度のごみ排出量は442グラムで人口10万人以上の都市で最も少なかった。その要因として、市が市民団体などから募ったごみ減量アイデアを展開しているとし、沼田准教授は「市民が減量に目を向けるきっかけが大事」と指摘する。

 福島市廃棄物減量等推進審議会はごみ減量が進まない場合、ごみ処理の有料化を「やむを得ない」としており、沼田准教授は「ごみ袋の有料化は、市民がごみ減量に注目するためにも必要な手段」との考えだ。

 県によると、ごみ袋を有料化する取り組みは、県内25市町村(20年3月現在)で実施されている。有料化を実施している市町村は、未実施の市町村と比べて排出量は約2割少ないという。

 ただ、福島市の担当者は「すぐに有料化とは考えていない」と強調する。「この3年は新型コロナウイルス禍で自宅時間が増え、災害によるごみもあったので影響を検証し、有料化の検討も含めて、さらに意識してごみ減量を呼びかけていきたい」と話した。