【TRY・バック転(上)】自信空回り...補助あり『クルクル』

 
高橋さんから回るこつを教えてもらう記者(左)。きれいに回るには、力まずにリラックスが大事だ

 回りたくなった。しかも後方に。休日の外出が減り、自宅で何げなく動画投稿サイトを見ていると、人がクルクル回っているではないか。「バック転」を紹介する投稿だ。この投稿を見てから、心がうずうずして仕方がないのだ。(報道部・石井裕貴)

 理由はもういい。すでに県をまたぐ移動の自粛も解除された。ならば行ってみよう。バック転を教えてもらえると聞き、施設がそろった仙台市宮城野区にあるスポーツ教室「クレイジー・トイ・ボックス」を訪ねた。

 教えてくれたのは代表の高橋知恵さん(37)と講師の遠藤良樹さん(41)の2人。「何歳からでもバック転を覚えることはできます」と遠藤さん。教室ではみんながクルクル回っている。50代や40代の主婦や会社員らも指導を受けているという。遠藤さんも29歳からバック転を覚えたそう。

 理想的な形でバック転をできるようになるには、人にもよるが、3カ月から1年かかるという。それを1日でやり遂げるというトライだ。回りたくなったことと同じく理由は分からないが、「できるだろう」と根拠のない自信が出てきた。

 胸の高鳴りを抑えつつ練習に打ち込む。90分間の練習を経て、いざ集大成。両手を上げるあのポーズから始まり、一度両手を下げて膝を落とし、両手を再び上げるように反動をつける。

 ももの筋肉と腰の位置、腕を動かす動作、そして適度なリラックス。これらが絶妙に重なると、たまった力が解放された。体はくるりと回転、眼前の景色は高速に動きだす。今、一人のアスリートに変化し、「バック転ができるという名声」を手に入れようとしている。

 足に加重を感じ、着地したことを確認する。けがもない。無事だ。それもそのはず、最初から最後まで遠藤さんら講師陣が脇で支えてくれたのだから。90分間だけの練習でクルクルなんて、少なくとも私にはできるわけがない。講師陣の支えがあってこそ。漠然とした自信が恥ずかしくなるほど鼻は折れていた。最初の記者は空回り。回るには秘訣(ひけつ)があった。