【TRY・イナイチ(下)】見えない猪苗代湖...急坂越えれば祝完走

 
ゴールの上戸浜に到着。約5時間をともにした「愛車」と記者

 穏やかな風と美しい湖岸の景色とは打って変わり、会津若松市に入ると新緑の山々が目の前に広がってきた。一方で、徐々に増えてきた上り坂にペダルをこぐ力も強くなる。「ここからが勝負だな」。イナイチを走破するために待ち受ける「苦行」に覚悟を決めた。(郡山総支社・斎藤優樹

 会津レクリエーション公園を通過するころには、道路の交通量も減り、車道を走っているのは記者くらいになった。ここで問題が発生。「ここはどこだ」。周辺に案内板はなく、自分の位置がつかめない。

 スマートフォンの地図アプリで道を探して進むことにした。意地を張り、きつい上り坂もギアを変えずこぎ続けたからなのか、思いのほか疲れもたまってきた。「ここまで来たら最後まで上り切る」

 気持ちを引き締めて必死にペダルをこぐこと約2時間余り。田園風景が続く。ようやく青松浜で猪苗代湖と再会できた。思わず、「会いたかったよ!」と心の声が漏れた。郡山市湖南町に入り、「あともう少し」。気持ちも高ぶっていたところで、最大の難関が立ちふさがる。

 猪苗代湖沿いに進んでいるはずの道が山道に変わり、急激な坂道が目の前に現れた。必死にペダルをこぐが前に進まない。ギアを変えるも、終わりの見えない上り坂。頂上でとうとう膝に手をついてしまった。上り坂を終え、平たんな道を進むと、ゴール地点の上戸浜が見えてきた。

 心待ちにしていた場所。到着後、愛車を掲げ記念撮影すると、達成感が込み上げてきた。約5時間のロングライドを笑顔で締めくくることができた。

 お世話になった「愛車」を車に載せ、レンタルした「温泉ゲストハウス 湯kori(ゆこり)」へ。従業員の安斎達哉さん(34)のご厚意で温泉に漬かると、疲れも癒やされた。「次はおいしい料理とお酒を飲んで泊まりたい」。そんな願望も込み上げてきた。

 猪苗代湖沿いをスポーツバイクで走りながら、観光も楽しめる「イナイチ」。時間を費やした分、楽しさも想像以上だった。案内板や休憩場所など環境が充実すればさらに人気が高まるだろう。地元の魅力を再発見するのも、いい休暇の過ごし方なのかもしれない。

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 上戸浜 猪苗代湖東部に位置する。猪苗代湖と正面に沈む夕日の景色を楽しむことができる人気スポット。例年は7月中旬から湖水浴やキャンプを楽しめることができ、家族連れでにぎわう。磐梯朝日国立公園に含まれる。今年は新型コロナウイルスの感染拡大で浜開きは行っていない。