【TRY・環境省職員(下)】自然を守りたいが...体力切れそう

 
磐梯山を望む銅沼で一休みしながら、小野寺さんから話を聞く記者(左)

 裏磐梯の登山道は続く。磐梯朝日国立公園で希少動植物の管理業務を担う環境省職員へのトライ。強い日差しの中で急斜面を歩いたこれまでとは一転、二つ目の目的地までは日陰でなだらかな道が続く。(若松支社・高崎慎也)

 今回はセンサーで自動的に登山者数を数える機器からのデータ回収が目的。自然を楽しむ余裕がないまま2カ所目の目的地に到着した。

 「足元にキイチゴがありますよ」「あそこの枝にヤマブドウが」。案内してくれたアクティブレンジャー小野寺浩詩(ひろし)さん(52)が登山道周辺の自然を解説してくれたが、スタミナは切れかかっていた。

 データをうまく回収できるのか。登山者数は登山道維持や環境維持のために欠かせない基礎データ。ドライバーを握り、カバーを取り外してデータが記録されたカードを交換する。「上手ですね。毎回手伝ってほしいくらいです」。小野寺さんから合格点をもらい気分が楽になった。

 周囲に目をやると雄大な自然。今まで景色を楽しむ余裕のなかったことを後悔した。すぐ近くにある銅沼(あかぬま)に立ち寄った。赤茶色や緑色に光る水面と背後に広がる磐梯山のコントラストが美しい。

 桧原湖の美しさに見とれていると、小野寺さんが足元の草花を指さした。この辺りに自生することはないオオバコだという。「登山者が知らず知らずのうちに持ち込んでしまうんですね」。登山靴などに付いた種が落ちることが原因という。

 続く帰り道でも仕事はある。登山道の周辺に落ちているごみを拾うことだ。疲労がたまり、笑う膝を手で押さえながらの作業。豊かな自然を守る人の仕事を知り、人間の行動に胸が痛くなった。

          ◇

 銅沼(あかぬま) 磐梯山の北、裏磐梯側にある火山湖。1888(明治21)年の磐梯山噴火によって形成された。水質は強酸性で鉄、アルミニウム、マンガンなどが溶け込んでいる。湖底に水酸化鉄を含む赤い泥がたまっており、全体的に赤茶けて見える。五色沼の水源になっている。