【TRY・和菓子職人(上)】軟らか生地...作業は素早く繊細に

 
須田さん(右)の指導を受けながら、黄色のようかんをイチョウ形に型抜きする記者

 和菓子を作りたい。和菓子職人を描いたテレビドラマに触発されてしまった。最近は包丁すら握っていないが、挑戦しないと才能の有無は分からない。職人技にトライするため、2年半ぶりに営業を再開した福島市の和菓子店「江戸番重菓子 駒屋」に向かった。(報道部・千葉あすか)

 店内のショーケースには色とりどりのお菓子が並んでいた。黄色やピンク、緑色。モミジやカキなどの形をした秋を感じるお菓子ばかりだ。よく見ると繊細に成形されている。

 迎えてくれたのは、優しい笑顔が印象的な2代目店主の須田輝美さん(59)。須田さんが作り、四季折々の草花などを表現した「番重菓子」は多くのファンを引き付けている。

 駒屋は製造に欠かせない機械の老朽化などを理由に2017(平成29)年11月に店を閉めたが、閉店を惜しむファンらの支援を受けて今年6月に再開した。作るお菓子は150種類以上あるという。

 今回挑戦するお菓子はイチョウの葉とコギク。須田さんからお題をもらい、トライ開始だ。最初の作業は型抜き。色鮮やかな黄色のようかんをイチョウの形にする。

 それにしても想像以上に難しい。生地が軟らかく、型にへばりつく。「早く型を抜かないと、ようかんが乾燥しちゃうよ」。助言してくれた須田さんは、あっという間に何十個というイチョウを作り上げていた。

 次は金網にのせて乾燥。お菓子の種類によって温度や時間を変えて乾かす。この作業で外はさくっと、中は軟らかいという絶妙な食感に仕上がるという。

 乾燥後もスピードと繊細な作業が求められる。イチョウの上に、同じく作った小さなイチョウをのせ、砂糖で飾り付けて一つ目が完成した。お手本の須田さんの素早い手さばきに見とれていると、突然大量の白あんが目の前に現れた。

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 番重菓子 江戸時代に女性が歌舞伎を鑑賞する際、口を大きく開けなくても食べられるようにと作り始めたお菓子。「半生菓子」とも呼ばれる。砂糖や寒天などを原料に作り、美しい見た目と上品な甘さが特長。