【TRY・和菓子職人(下)】あんを練る...華やかな裏に力仕事

 
須田さん(右)の指導を受けながら、滑らかな舌触りを出すため白あんを練り上げる記者

 目の前に突然現れた大量の白あんは、次に作る和菓子「コギク」の材料だった。福島市の和菓子店「江戸番重菓子 駒屋」で取り組む和菓子職人へのトライ。次は店主須田輝美さん(59)が修業時代、触るまでに5年かかったというあんを使った和菓子作りに挑む。(報道部・千葉あすか)

 和菓子作りがこれほどの力仕事だとは思わなかった。四季を感じる植物などの形をした「番重(ばんじゅう)菓子」の完成に向け、白あんを練り上げる作業に取り掛かる。お手本を見せてもらうと簡単そうだが、白あんが硬い。

 「滑らかな舌触りを出すための作業だよ」と須田さん。何度も練る作業を繰り返すことで白あんから水分が取り除かれ、しっとりとしたあんに仕上がる。

 練ってどれほどの硬さにするのか。作業場内に数値を記したレシピらしきものが見当たらない。須田さんに尋ねると、「勘だね」と一言。長年の経験で得た手の感覚が頼りだ。

 まとまらない白あんと"格闘"。手助けしてもらって何とかクリアすると、一口大にしていく。それにしても和菓子職人は気が抜けない。気温や湿度も感じ取り、分量や作業内容を少し変えるのだから恐れ入る。

 記者がやっと作った「あんこ玉」を1列に並び終えると、須田さんのトレーには均一な大きさのあんこ玉が何列も並んでいた。最後の仕上げは慎重に。練った白あんに黄色のあんを合わせ、木型に詰めると手のひらサイズのコギクが完成した。

 作業を終え、店頭のショーケースを見ると、これから訪れる季節を感じるお菓子ばかり。移ろいを感じてもらうため、実際の季節より少し前に合わせて作られるという。

 須田さんは「和菓子の世界には『100日早くても1日遅くてもだめ』という言葉があるんだよ」と教えてくれた。和菓子職人の技には遠く及ばないが、季節を敏感に感じ取る感覚だけでも近づきたいと思った。