【TRY・発掘調査(下)】破片を手入れ...土器復元に『全集中』

 
能登谷さん(右)と接合作業を行う記者。焼き色や模様を見ながら合わせていく

 締めくくりは「整理作業」だ。発掘調査の成果を資料として後世に残す重要な工程だが、どんな作業が行われているのか全く想像もつかない。早速、福島市北矢野目にある市振興公社の文化財調査室を訪ねてみた。

 「発掘現場で遺構や遺物を細かく記録したことが、ここで生きます」。出迎えてくれた文化財調査専門員の上田優喜さん(30)が説明してくれた。

 上田さんには同市平石の「町畑・吉治下遺跡」の発掘調査で指導を受け、お世話になった。今回は遺物に絞り、整理作業に取り組む。主な工程である「洗浄」「ネーミング」「接合・復元」を体験した。

 事務所には遺跡から出土した遺物が所狭しと並べてあった。作業中の机には土器片がずらりと並び、作業員が真剣なまなざしを向けていた。

 まずは洗浄。ここからは作業員として10年ほど勤務している能登谷里美さん(47)の指導を受ける。遺物は砂や泥が付着しているので水で洗い落とし、遺物の様子をよく分かるようにする。「強くこすると削れてしまい、接合する際に合わなくなるため注意が必要」と指導を受け、注意しながら優しく洗った。

 次はネーミング。遺物がどこから出土したかが分からなくならないよう情報を書き込む。その内容は日付や場所、土層などでどこから出土したのかを示す。細い筆で細かい字を書くため集中力が必要だ。「どんなに小さな破片でも書き込みます」と能登谷さん。地道な作業が続く。

 いよいよ土器片の接合だ。つなぎ合わせて復元する。出土した場所が近い土器片から、焼き色や模様を見ながら組み合わせ、石こうや接着剤などで元の形状にしていく作業だ。

 ただ、破片の量が多すぎて訳が分からない。弱音が出てしまう。能登谷さんは「パズルのような感覚で楽しい。『かちっと』はまると気持ちが良い」と笑ってくれていたが、ついに記者は一つも組み合わせることができなかった。

 「自分が接合した土器が展示されているのを見るのがやりがい」とほほ笑む能登谷さん。遺跡発掘に関わる現場には、歴史を未来に残すため奮闘する人たちがいた。トライを通して記録を残す大切さを学んだ。

          ◇

 整理作業 発掘調査後の作業で、最終的に報告書にまとめる。水洗いから始まり、復元を終えると、大きさなどを測る「実測」に移る。土器の模様などを図面化する「清書」や写真撮影などを行い、報告書に記録を残す。発掘調査の情報は報告書で情報共有されている。