【TRY・北限富士山撮影(中)】富士山とは逆方向に青空が...

 
花塚山の頂上を目指す記者(左)。場所によっては補助ロープを頼って登る急斜面もある

 早朝5時半。いよいよ富士山を望める北限の山、花塚山(はなづかやま)(918.5メートル)でトライが始まった。辺り一面は暗闇。川俣町と飯舘村の最高峰に登り、308キロ先の富士山をカメラで捉える。成功のみをイメージし、「富士山遠望隊」が山の麓に集まった。

 ヘッドライトを身に着け、ヘルメットの姿の人も。同行をお願いした斎藤金男さん(73)らベテラン3人が何とも頼もしいが、気温は氷点下3度ほど。それにしても寒さが染みる。

 遠望隊は登山口に鎮座する「放鹿神社」へ。まずは登山の安全と富士山撮影の成功祈願だ。「それでは行きましょう」。声を掛け合い、気持ち一つにして登山を開始した。

 ヘッドライトでわずかに照らされた登山道。ひたすら山頂に向けて歩を進める。すると開始早々、急な上り坂が続く。運動不足の記者の体には響く。

 「大丈夫ですか」「頑張りましょう」。声掛けに励まされながら、自分を鼓舞した。登山道の途中には、特徴的な形をした岩々が姿を現す。「烏帽子(えぼし)岩」「行者もどし岩」「護摩壇(ごまだん)岩」など。

 これらの岩をチェックポイントにする登山者も多いという。ひたすら歩くこと約2時間。ついに山頂が手の届くところに。「花塚山頂△918.5メートル」。看板が目に飛び込んできた。

 冷え切った体も登り切ったころにはぽかぽかだ。早速、撮影の準備に取り掛かった。ところが雪がちらつき始め、撮影の雲行きが怪しくなってきた。見渡す景色にもやがかかり始め、撮影するまでもなく、斎藤さんから「今日はさすがに厳しいね」と一言。カメラも構えない。

 「え、そんなあっさりと...」。思わず声が漏れてしまった。すると、富士山とは逆の方向に青空が...。山形方面は遠くまで見通せるではないか。雪化粧した月山や鳥海山などの絶景が広がっていたが、うれしさ半分、悲しさ半分の心境だ。

 「天気だけはなかなか読めないね」と斎藤さん。経験を積んだベテランも山の天気にはかなわないようだ。富士山撮影はきっぱり断念。集合写真を撮影し、山頂を後にした。

 無事に下山し、上司に報告の電話を入れると思いも寄らぬ言葉が返ってきた。「もう一度登ってくれ」。よく考えてみれば、こんな簡単に撮影できるわけはない。「.........」。思わず言葉に詰まったが、上司に「分かりました」と一言。「よし、ここは勝負どころだ」と意を決し、気持ちを立て直した。

 北限の理由 地球は丸いため、富士山が見えるのは地表からだと236キロが限界とされる。しかし、光は大気中を通る時、大気の密度差で屈折して直進せずに曲がることから、富士山が本来の位置より浮き上がって見える。そのため308キロ離れた花塚山からも富士山を見ることができる。