【TRY・山塩作り(下)】手塩にかけ仕上げ 不純物取り除く

 
ピンセットとレンゲを使い、すすやカルシウムなどの塊を見つける記者。緻密な作業だけに目がチカチカしてくる

 乾燥し、きらきら光る山塩と対面して充実感に浸っていると、渡されたのはピンセットとレンゲ。鍋の前で味わった猛烈な熱気との闘いと打って変わって、緻密さを求められる仕上げ作業が待っていた。(喜多方支社・羽鳥拓貴)

 仕上げは、山塩から不純物を取り除く作業だ。ぱっと見て問題はなさそうだが...。「よーく見ると(不純物が)残ってるんだよ」。袋詰めなどを担当する遠藤キミヨさん(67)がサポートしてくれた。

 北塩原村の会津山塩企業組合にある湿度と温度が保たれた部屋。左手にピンセット、右手にレンゲを持ち、レンゲの腹を使ってトレーの山塩を広げる。

 「どれだ?」。全てが白く見える。目もチカチカする。そんな記者を横目に遠藤さんが見つけてくれた。それは気付くかどうか分からないほどのすすやカルシウムなどの塊。「これを3回繰り返します」。あぜんとした。

 乾燥した山塩から、さらに不純物を取り除くこと約30分。山塩を袋に詰めて完成した。なめてみると、スーパーで売っている塩と違い、まろやかさを感じる。これまでの苦労を知る分だけ、一層おいしく感じる。

 遠藤さんにおすすめの味わい方を聞くと「そばにかけるとおいしいよ」。それならば手打ちそばで味わおうと、喜多方市山都町の飯豊とそばの里センターに向かった。

 記者はそこで十割そばのそば打ちに挑戦。そば打ち20年以上のベテランの永島陽子さん(84)の指導を受けて4人分のそばを作った。そば打ちから、ゆでるまで約1時間。完成したそばはいびつな形と長さだが、初めてにしては上出来だ。

 さっそく山塩をそばにひとつまみ。そばの香りとほのかな塩気が絶妙に合う。こんな食べ方に、また大人の階段を上った感じがした。

 「手間を掛けるからおいしい山塩ができる」。山塩作りの作業中に聞いた言葉を思い出した。汗をかく作業から、繊細な作業まで。「機械では作れない山塩」の意味に納得した。

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 「会津山塩」の出荷 会津山塩企業組合の栗城光宏代表理事が、出荷前に必ず味を確認している。煮詰める温度の違いなどによって結晶の大きさや味が変わるため、出来上がった山塩同士を混ぜるなどして品質管理している。