【TRY・エクストリーム温泉(上)】「究極の癒やし」求めて

 
源泉エリアで解説するガイドの布引さん(右)と記者。源泉を温泉街に運ぶパイプに触るとほんのり温かい

 お風呂は好きだが、秘湯と呼ばれる場所には行ったことがない。興味はあったものの案内してくれる人がいないと実際に足を運ぶのは難しかった。「普通の温泉で十分じゃないか」とも思っていた。ところが猪苗代町で秘湯と登山体験を両方楽しめるガイドツアーが今月から始まり、評判を呼んでいるという。これなら初心者でも大丈夫そうだとツアーに参加した。(猪苗代支局長・伊藤雅将)

 目指す秘湯は、安達太良山西側にある中ノ沢、沼尻両温泉の源泉「沼尻元湯」の周辺エリアだ。この源泉と川の水が交わり、ちょうどいい湯加減になるポイントで天然の露天風呂が味わえる。ツアー名は「エクストリーム(究極の)温泉」。道中も含めて「究極の体験」ができるために名付けられた。ガイドは沼尻温泉にあるカフェ&アクティビティ「ノーウェア」店長の布引雄太さん(39)が担当してくれた。

 この日は見事な晴天。ピクニック気分で浮かれていたら、布引さんから「源泉は硫化水素ガスの発生地帯で立ち入り禁止区域になる」と説明されてギョッとした。もちろんガスのない安全な場所で入浴するのだが、ガイドが持ち歩く火山ガス検知器の硫化水素濃度が10ppm以上を示せば中止に。ちなみに3ppmで強い臭気、10ppmで目に刺激、150ppmで生命に危険が生じる。秘湯までの道のりは甘くない。

 店から沼尻登山口までは送迎車があり、登山道からは徒歩で向かう。歩き始めて10分ほどで最初の絶景ポイント「白糸の滝」に到着。断崖から温泉水が一筋の湯の滝になって落差60メートルを流れ落ちる。今は新緑もきれいで、途中には硫黄鉱山の跡地や温泉旅館の廃屋もあり、湯治場の歴史を楽しむこともできる。

 次第にごつごつした岩場が多くなり、白糸の滝から歩くこと50分で源泉エリアに到着した。植物が少なく、岩肌むき出しの殺伐とした景色が広がる。源泉を温泉街へと運ぶ太いパイプが目立つ場所にあり、触るとほんのり温かい。

 ここで布引さんが小型のガス検知器を取り出してベルトに装着。温泉地に特有の腐卵臭はするが、風が強いせいかメモリはゼロのままだった。「風が吹いていないとガスがたまりやすいので注意が必要」と布引さん。運が良かった。

 さらに先へ進むと「立ち入り禁止」の看板があり、源泉に近づくのはここまでとなる。少し引き返していよいよ入浴できる場所へ。前日は雨だったので川の水が多いようだが、湯加減は大丈夫だろうか。心を躍らせながら秘湯スポットへと向かった。

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 沼尻元湯 中ノ沢、沼尻両温泉(猪苗代町)の源泉。単独源泉では湯量日本一で、安達太良山を流れる硫黄川の上流に毎分約1万3400リットルの湯が湧き出ている。「エクストリーム温泉ツアー」の問い合わせはノーウェア(電話0242・93・7081)へ。6月は土曜、日曜日のみの営業。