【TRY・マウンテンバイクトレイル(下)】でこぼこ道たまらない

 
国分さんに導かれて入った山道。ウオーキングコースだというが幅は狭い

 急な下り坂やカーブ、でこぼこしてぬかるんだ地面を前に、もう何回言っただろう。「え、ここを行くんですか」。街中で見掛けることもあるマウンテンバイクの本当の使い方を、記者は身をもって学んでいた。(石川支局長・国井貴宏)

 コース整備などを委託されている国分洋平さん(38)に導かれ、福島空港を見渡せる丘を空港とは反対側に下り、森の中に足を踏み入れた。

 ウオーキング大会も開催されるコースだそうだが、歩くのとは訳が違う。勾配があって、石や木の根ででこぼこした地面の上では自転車は当然よろける。国分さんは「これがたまらない人にはたまらないんですよ」と笑うが、初心者の記者は顔がひきつる。

 学生時代にはどこまでも自転車で移動したものだが、山道を走る日が来るとは。怖がって少しスピードを落とすと、国分さんの姿はすぐ遠くなる。必死に背中を追い続けた。

 国分さんによると、玉川村周辺のコースはマウンテンバイクを乗るには、いい環境だという。理由の一つは、自転車に乗り続けられるコースの割合が高いこと。マウンテンバイクトレイルでは、場所によっては勾配が急過ぎて自転車を押すどころか、担いで運ばなければいけない場合もあるそう。村周辺は程よい勾配で、自転車に乗ったまま移動できる。

 もう一つはクマの目撃例がほとんどないことだそう。「(ほかの場所で)クマみたいな獣のうなり声が周りから聞こえて逃げたこともあります」と国分さん。獣も山道をすごい速さで走る生き物を見て怖かったのではないだろうかとも思うが。

 山に入って1時間ほどたったころには、不安定な道にもだいぶ慣れ始めた。例えるなら、自力で進むジェットコースターというところだろうか。電動アシストのおかげで上り坂もつらくない。張り上げていた悲鳴はいつの間にか笑い声に変わっていた。

 山を抜け、舗装された道に出ると、少し物足りなさすら感じた。この日、走ったのは初級~中級コース。スリルは十分だった。ならば上級はどんなコースなのか尋ねると「ジャンプして道を跳び越えたりします」と国分さん。上を目指すと果てしない。

 今回のトライを振り返ると、会話するよりも叫んでいた時間の方が長かった。国分さんはマウンテンバイクの魅力について、こう言っていた。「子どもに戻れるというか、無邪気に遊べるところですかね」。体験から1週間ほどしかたっていないが、記者はまた山の中を走りたくてうずうずしている。

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 サイクルヴィレッジたまかわ 玉川村がスポーツツーリズムによる交流人口拡大を目指して始めた計画。今回記者が体験した自転車のレンタル事業を行っているほか、BMXやスケートボード、インラインスケートを楽しめる屋内施設を整備している。施設は10月にオープンする予定。