【TRY・楢葉町スマートライフステイ(上)】おいしく健康、減塩ご飯

 
「健康スタイルお膳」を食べる記者(左)。よくかむことで、新型コロナウイルスの感染防止対策である黙食にもなる

 「中年で少し不健康そうな人を探してるんだ」。ある日、デスクから電話があった。確かに、無理をすると体のあちこちが痛いような。しかし、昨年の健康診断は視力以外、全てA判定。「俺じゃないんじゃないの」とふに落ちないまま、身支度を整え、県内初の宿泊型健康プログラムが始まるJヴィレッジに向かった。(勿来支局長・本田武志)

 車を1時間ほど走らせると目的地に到着した。ここで始まるプログラムが「楢葉町スマートライフステイ(SLS、宿泊型新保健指導)」だ。Jヴィレッジに泊まりながら、旅行気分で健康増進に取り組む。

 プログラム体験会の集合は午前11時。間もなく和室に案内された。テーブルの上には、豪華な昼食「健康スタイルお膳」が並んでいた。お品書きに目を通す。「ならはの名物マミーすいとん 地物野菜の洋風仕立て」「秋刀魚(さんま)のみぞれ煮」などに加え、しっかりとご飯、デザートも付いている。

 驚いたのはこれだけ豪華な料理なのに、摂取カロリーは一般的なカレーライス(約800キロカロリー)よりも低い713キロカロリーに抑えられていること。しかも、減塩なのにおいしい。

 初日の昼と夕方、最終日の朝と昼の計4回、和食中心のメニューが提供された。献立は楢葉町スポーツ協会・町スポーツコミッション、Jヴィレッジそれぞれの管理栄養士が話し合って考えた。町の魅力が伝わる地元の食材がぜいたくに取り入れられていた。

 初日の夕食。ウニが入った「ご馳走(ちそう)茶碗(ちゃわん)蒸し柚(ゆず)の香り」の輝かしさといったらこの上ない。最終日の昼には、東京五輪の聖火リレーがJヴィレッジをスタートした際、VIPたちが味わったという「オリーブの炊き込みご飯」を食べることができた。

 料理を担当したJヴィレッジの和食料理長大竹正春さん(52)においしさの秘密を聞くと「だしを利かせるとともに、食材のうま味を引き立てた。野菜の甘みを味わってほしいんですよね」と目を細めた。

 大竹さんはこんなことも言っていた。「健康だからこそ、おいしく料理が食べられる」。一般の宿泊客やアスリートまで幅広い人に料理を提供するだけでなく、かつて競輪選手を目指し、食事の大切さを身をもって理解している大竹さんだからこその重みがあった。

 しぶしぶトライを始めたのに、「大竹マジック」ですっかり胃袋をつかまれたようだ。おなかがいっぱいになった次は、体でも動かしてみようか。

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 スマートライフステイ ホテルや旅館などの宿泊施設や観光資源を活用し、旅行気分で楽しみながら健康増進につなげる新たな保健指導のプログラム。楢葉町スポーツ協会が町やJヴィレッジと連携して商品化の準備を進めている。早ければ来年1月にも一般向けにプログラムを開始する予定。