【養蚕(中)】成長の「源」桑の葉取り

 
真佐子さん(右)から桑の枝の切り方を教わる記者

 「福島市飯野町で養蚕を営む黒沢仁さん(66)方での養蚕体験から数日。16万頭の蚕は、脱皮の準備をする「眠(みん)」を2度経て、順調に成長していく。「桑の葉は蚕様の餌に欠かせない。桑畑に行って、桑取りやっかい」。黒沢さんから連絡を受け、次は蚕に桑の葉を与える給桑(きゅうそう)を体験することになった。(報道部・津村謡

 蚕様、半月で3センチ→8センチに

 沢さん方のすぐ近くには手入れの行き届いた桑畑が広がっている。共に作業をしてくれた黒沢さんの妻真佐子さん(65)が剪定(せんてい)ばさみでパチンパチンと手際よく桑の枝を切り始めた。記者も剪定ばさみを使って見よう見まねで切ったが、うまくいかない。「(剪定ばさみの)持ち方が逆だよ」と冷静に指摘を受け、仕切り直して作業を再開し桑を集めた。

 桑の高さは1メートル程度。少しかがまないと切ることができないが、この体勢が下半身に負担がかかってきつい。その横で真佐子さんは素早く切っていく。「体力には自信あったのにな」。慣れない動きに戸惑うばかりだ。

 切った桑を保管場所に運び、この日の作業は終了した。養蚕体験はまだ折り返しだが、手作業の多さに驚くと同時に、養蚕農家の地道な努力を実感してきた。

 蚕は成長に従い、桑の葉を食べる量が増えていくという。最初の作業体験から約半月後、作業所を再訪すると、桑の葉が食い尽くされ、最初は体長3センチほどだった蚕が8センチほどに成長していた。丸々と太った蚕を見ると、親心のような感情が湧き上がってきた。

 「いよいよ上蔟(じょうぞく)だ」と黒沢さん。上蔟とは、蚕を飼育棚から繭を作るための枠「蔟(まぶし)」に移す作業のこと。蚕は放っておくと上ろうとする性質のため、「回転蔟(まぶし)」という道具を使い、蔟を回転させて枠の中の蚕を分散させる。
 黒沢さん家族らと回転蔟に蚕を移す作業を行う。幼虫の姿に別れを告げるため、しばし眺めていると、真佐子さんが「体があめ色になってきた蚕様は、間もなく糸を吐くようになるのよ」と教えてくれた。繭になった姿を見るのが待ち遠しく感じた

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