【機織り、染め物(上)】糸から布へ、繊細な技 徐々にテンポつかみ集中

 
佐藤さん(右)から織り方を教わる記者

 このコーナーで前々回、養蚕に挑戦した。その最後に、福島市飯野町で代々養蚕農家を続ける黒沢仁さん(66)=市議=からある提案を受けた。「次は機織りと染め物に挑戦してみたら」。出荷された繭は機織りなどを経て製品化されるが、記者はその過程をよく知らない。機織りと染め物への挑戦を決めた。(報道部・津村謡記者)

 向かったのは川俣町にある「かわまたおりもの展示館・からりこ館」。古くから養蚕と機織りが盛んで、「絹の里」として知られる同町で機織りや染め物体験ができる施設だ。ここで体験をすることになった。

 指導してくれるのは施設で20年以上の指導歴がある佐藤朋子さん(64)。最初に織物の基本とされる平織りで作る10平方センチのコースターに挑戦した。

 「高機(たかばた)」と呼ばれる織り機を使い、糸を織っていく。足元にある踏み木を踏み、200本近い経(たて)糸を上下に振り分けながら、その間に緯(よこ)糸を通して一枚の布を織っていく。作業には「シャトル」や「筬(おさ)」と呼ばれる道具も使う。

 まずは佐藤さんが手本を示してくれた。「ガチャンガチャン」。館内にテンポ良く、心地よい音が響く。「これならできそうだ」。早速糸を織り始めたが、糸を通す方向や踏み木を踏むタイミングが合わない。手順が分からなくなり、手の動きが止まる。「ガチャン...」。テンポのいい音が続かない。「うまくいかないな...」。頭の中が混乱した。

 開始から10分近く。少し慣れ、「ガチャンガチャン」と心地よい音が響き始めた。「慣れてくれば楽しいでしょう」。佐藤さんの言う通り、糸を織ることに夢中になっていた。

 30分近くたったところで、織ったものの形を整える仕上げ作業を行い、コースターが完成した。黄緑色を基調にしたきれいな色のデザインだが、端の糸がそろわず、不格好なものになってしまった。「単純な作業だけど、力の入れ具合が大切なのよ」と佐藤さん。「繊細さが必要なのか」。機織りの奥深さを知った。

 「次は染め物をやってみましょう」。完成の余韻に浸るのもつかの間、作業所の奥へ案内された。

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 織り方の種類 織物の基本的な織り方として「平織り」「綾織り」「朱子(しゅす)織り」の三つがあり、これらは「三原(さんげん)組織」と呼ばれる。このうち平織りは、経(たて)糸と緯(よこ)糸が交互に交差する一番基本的な織り方とされている。平らで表裏とも同じで摩擦に強く、丈夫な織物に仕上がる。主な平織りの絹織物は羽二重など。

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