【機織り、染め物(下)】色付けコツは煮物 熱々液にじっくり、冷めて鮮やか

 
佐藤さん(右)から染め方の指導を受ける記者

 川俣町の「かわまたおりもの展示館・からりこ館」で機織りを体験した記者。次は絹糸の織物を専用の液体で色付けする染め物の体験に挑戦する。(報道部・津村謡記者)

 「染めることで織物は鮮やかな色になります」。同館で指導員を務める佐藤朋子さん(64)の言葉に「どんな色になるのだろう」と想像が膨らんだ。

 与えられた課題は、白色の生機(きばた)という加工前の絹織物に色を染め、スカーフを作ること。まずは大きなおけの中に50度のお湯で割った赤色の抽出液と生機を入れ、生地全体に色を付ける。抽出液は植物を原料としており、植物で染色することを「草木染」と言う。

 色付けにムラが出ないよう、液体の中で生じた空気を抜き、生機を軽く引き伸ばす。「熱い...」。ゴム手袋を着用していたとはいえ、熱さが伝わってくる。また生機は軽くて薄いため、液体の中でねじれて不規則に動き、引き伸ばす作業がしづらい。「生地を液体から出さないようにね」と佐藤さん。機織り同様、ここでも繊細さが必要だ。

 抽出液に入れること20分。生地を液体の中から取り出すと、薄い赤色に染まっていた。生地の発色を良くするため、さらに金属の粉を溶かした液体に浸し20分待つ。液体の中から生機を取り出して鍋に入れ替え、再び赤色の抽出液に漬けて10分ほど煮込む。色を染み込ませるため、最後は鍋の火を止めて冷ます。「どんな仕上がりになっているのか」。気持ちが焦るが、「煮物を作るときはゆっくり冷まして味を染み込ませるでしょ? それと同じよ」と佐藤さん。焦る気持ちをぐっとこらえ、気長に待つ。

 2時間後、鍋から生機を取り出し乾燥させると、鮮やかなピンク色に染まっていた。佐藤さんが生機にアイロンをかけるとしわが伸び、絹の滑らかさがより際立った。これで作業は終了。両手に持ち、なびかせると「フワリ」と空中を舞った。「きれいだ...」。思わず見とれてしまった。

 一連の挑戦で蚕から繭ができ、その糸でスカーフなどができるまでの流れを体験した。時間や手間はかかったが、機械で大量生産される製品と異なり、世界に一つだけの製品。かつて地域を支えた産業を体験し、現代との違いを感じることができた。「一つの製品にはいろいろな人が関わり、さまざまな思いも込められている」。手にしたスカーフを首に巻いてみると、人の温かみが伝わってきた。

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 草木染 植物の葉や枝を煮出して作った抽出液で布や糸を染めること。植物の種類によってさまざまな色の抽出液を作ることができる。アイの葉は藍色、ウルシの葉は黄色になるなど、同じ緑色の葉でも異なる色ができる。

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