【火災原因調査(下)】機器分解、火元はどこだ

 
焼けたサーキュレーターの火元を探るため、慎重に内部を観察する記者(右)

 火災の出火原因を探り、予防につなげる火災原因調査トライ。郡山地方消防本部予防課火災調査係の国分貴志さんらからイロハを教わり、次は電気配線・機器の検証に挑戦する。(郡山総支社・千葉あすか記者)

 「配線断面」つぶつぶ見えた

 用意されたのは、空気を循環させるサーキュレーターの焼けたもの。火元を探るために観察すると、底のモーター付近の焼け方が激しい。プラスチックなどが切れる超音波カッターを借り「失敗したら大切な証拠が失われる」と腰が引ける気持ちを抑えて切ってみる。サーキュレーター本体に火元を確認できなかったが、モーターにつながる配線の先が黒くなっていた。切れた配線の断面が丸くなり、小さなつぶつぶが見える。「電気機器が切れたりついたりすることはありませんか? あの現象はショートの一歩手前で、とても危険です」と担当者が教えてくれた。

 配線が重いものの下に挟まっていたりすると、中の銅線の一部が切れ、残った銅線に高圧の電流が流れる。すると熱を持ち、火花が散ることがあるという。身近なところに発火源があることを知った。

 ほかにも日常生活の中に危険は潜む。コンセントとプラグの隙間にほこりや湿気がたまり発火する「トラッキング現象」だ。両者の隙間にほこりなどがたまり放電が繰り返されると、ほこりは炭化して電気の通り道になり、そこから放電して発火するという。実際に似た状況にしたプラグをコンセントに差し込むと、ぱちぱちと音がした後、間もなくコンセントから勢いよく火が上がった。(郡山総支社・千葉あすか記者)

 この現象は電気機器を使っていないときも発生するという。ふと自分の家のことを思い出した。「コンセントの近くに新聞が積み重なり、ほこりもたまっている。あれに火が付いたら...」。恐怖感に襲われた。

 今回は特別に時間を設けてもらったが、同消防本部は防災イベントなどで同様の実験を披露することもあるという。「火の用心と言われるが、何をどのように気を付けたらいいかを呼びかける。危機感を持ってもらうのも業務の一つ」と国分さん。「火災は人的要因が一番大きい。だからこそ自分たちで防ぐこともできる」と力を込めた。

 今回の挑戦で消防の根源に触れ、小さなリスクが大きな火災を招くことも知った。「火災は防げる」。この言葉を心に留めながら、まずは部屋のコンセント周りの掃除から始めよう。

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 火災の出火原因 郡山地方消防本部によると、昨年1年間に管内で起きた火災の出火原因は、「放火と放火の疑い」(24件)を除いた失火のうち「電気配線」が最も多い16件。火災の損害額では約4133万円と最も多かった。電気系統が原因の火災は近年増加傾向にあるという。

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